研究課題/領域番号 |
22J00910
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大久保 心 東京大学, 教育学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 教育格差 / 生活時間 / 社会階層 / 子ども / 成績格差 / 生活習慣 |
研究実績の概要 |
2022年度の研究期間が2023年1月からの3か月間と短期間だったこともあり、学会報告や論文の投稿には至らなかった。しかし、内外の階層研究や貧困研究、生活時間研究に関する論文や書籍を整理、および社会調査データの二次分析を通じて、2023年度の研究の推進に向けた準備は十分に整えることができた。成果は大きく以下の2点として挙げられる。 成果1:「放課後の生活時間調査,2013」(ベネッセ教育総合研究所)の二次分析を行い、小中学生の生活時間と成績格差との関連を探索的に検討した。記述的分析の結果、低階層かつ好成績、高階層かつ低成績の子どもの場合、低階層かつ低成績な子どもよりも教育的時間は長く、享楽的時間は短い傾向が見られた。また、それは小学生よりも中学生において顕著な傾向であった。この結果について、2月に開催された学外の研究会(2023年6月開催予定である日本子ども社会学会大会の企画に向けた研究会)にて報告を行い、学外の若手研究者との分野横断的な議論に至った。これらの成果をもとに、学術誌に投稿予定の論文を執筆中である。 成果2:「放課後の生活時間調査,2013」の二次分析により、親が高学歴であるほど学校外学習時間が長く、テレビやゲーム、スマートフォンなどのスクリーンタイムが短い、という先行研究に整合的な結果が得られた。また、短時間の学校外学習時間、および長時間のスクリーンタイムの学業成績との負の関連も確認され、これも先行研究に整合的な結果だった。一方、「親学歴→学校外学習時間・スクリーンタイム→成績」というモデルにおいて、成績の階層間格差について生活時間の説明力は大きいとはいえないことが確認された。この点については、今後別のデータでも確認されるかを検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
個票データの二次分析は予定通り進めており、子ども期の生活習慣と成績の関連について部分的に明らかにすることができた。また、その結果を学会発表や論文としてアウトプットするための準備も進めており、その点では順調に進展している。また、親子を対象とした生活時間の質的調査については、2022年度に実施済みの予備調査をもとに、2023年度に本調査を実施する予定であり、これも順調に進展している。ただし、計画していた「21世紀出生児縦断調査」(厚生労働省・文部科学省)と「子どもの生活と学びに関する親子調査」(ベネッセ教育総合研究所)の二次分析には着手できていない。2023年度前半のうちにできるだけ早くこれらの分析を進め、研究成果として発表できるように努めたい。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、研究期間が短期ということもあり、総じて研究目的に則した先行研究の整理や準備が中心となった。2023年度からは、そうした前年度の準備を活かし、「21世紀出生児縦断調査」「子どもの生活と学びに関する親子調査」の二次分析と、親子を対象とした生活時間の質的調査を遂行したい。また、特に二次分析の結果に基づく学会報告や論文投稿を積極的に行っていきたい。なお万が一、質的調査が新型コロナウイルス感染症などの状況によって十分に実施できない場合には、代替策として、オンラインによる聞き取り調査を考えている。さらに、研究が順調に進展した場合には、生活時間の分析だけに限らず、生活習慣全般を研究対象として、「子どもの生活と学びに関する親子調査」(ベネッセ教育総合研究所)や「親と子の生活意識に関する調査,2011」(内閣府子ども若者・子育て施策総合推進室)の二次分析も行う予定である。
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