研究課題
歯周病は本邦における成人の歯の喪失原因でもっとも大きな割合を占めており、歯周病や歯の喪失は全身にも多くの悪影響を与えることが知られている。従来の方法では治療不可であった重度歯周炎の新たな治療法として、我々のグループは歯周組織の再生能力のある歯根膜由来間葉系幹細胞(PDL-MSC)が臨床応用可能であることを示してきた。しかしながら、従来の方法では細胞ソースに限りがあることがボトルネックとなっていた。本研究により、無限の増殖能を持つヒトES細胞からPDL-MSCを分化誘導する方法を確立することでその臨床応用への可能性を探索するとともに、ES細胞から顎顔面領域細胞への分化のメカニズムを解明する。本年度は、ES/iPS細胞の培養技術の確立を行った後に、発生過程でPDL-MSCの中間体となる神経堤細胞の分化誘導法を検討した。具体的には、理研BRCと医薬基盤研究所より入手した3株のiPS細胞と国立成育医療研究センターより入手した7株のES細胞を用いて、培地・フィーダー細胞の有無・コーティングマトリックス・凍結方法を検討し、最適化した後に、CD271を指標としてフローサイトメトリーを使用してES/iPS細胞から神経堤細胞への分化誘導法を確立し、再現しうる最高効率での分化条件の検討を実施した。また、本研究の目的最終分化産物であるPDL-MSCについて、次世代シーケンサーによる遺伝子プロファイルの解析を行い、神経堤細胞よりMSCに分化させる際の指標を作成した。同時に、ES/iPS細胞から分化誘導した神経堤細胞においても次世代シーケンサーを用いた遺伝子発現解析を行うことで、ES/iPS細胞からPDL-MSCまでの道しるべとなるデータの構築を進めている。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、ES/iPS細胞技術を確立した。ES/iPS細胞については合計で10株の細胞株を保有し、ワーキングセルバンクを構築し、神経堤細胞への分化誘導法を最適化した。神経堤細胞からPDL-MSCへの分化方法についての検討を進めている。
次年度は、ES細胞から神経堤細胞を経て歯根膜由来間葉系幹細胞の分化誘導に挑戦する。分化誘導にあたっては、成長因子を用いる方法や遺伝子導入、オルガノイド形成法を用いた方法など様々な手法を検討する。分化誘導方法の検討は当研究において最もハードルが高いステップであるため、今後のシームレスな実験遂行を見据えて免疫不全ラットを用いたin vivoでの細胞評価方法についても検討を開始する。
Morita K., ‘Improvement of voluntary detachability in a thermos-sensitive culture dish for clinical application of PDL-cell sheet.’, 2021 Japan-Korea Joint Seminar Project, on the web, Nov. 2021.
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Frontiers in Cellular and Infection Microbiology
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