本研究ではTHP-1細胞由来のマクロファージの分極を指標としたin vitroにおけるバイオマテリアルの免疫学的評価法の確立を目指した。現在、THP-1細胞をマクロファージに分化させるための培養条件やその後のin vitroにおける免疫学的評価法は定まっておらず、様々な手法が採用されている。なかでも、TCPS上でTHP-1細胞をM0マクロファージに分化させたのち、バイオマテリアル上に播種し、免疫学的評価を行う手法とバイオマテリアル上で分化させ、その後の免疫学的評価を行う手法が存在する。本年度は、THP-1細胞をバイオマテリアル上でマクロファージに分化させる手法が後の免疫学的評価に与える影響を検討した。THP-1細胞がTCPS 上でM0マクロファージに分化することでM1遺伝子の発現量増加が報告されているが、セルロースとPETとPMMA上で分化したマクロファージではM1遺伝子がTCPS以上に強発現した。以上のことから、TCPS 上ではM0マクロファージに分化するが、セルロースとPETとPMMA上で分化したマクロファージはM1型に分極することが示唆された。バイオマテリアル上の分化では、分化後のマクロファージの遺伝子発現量がバイオマテリアルによって異なるため、免疫学的評価を行う際はTCPS 上でM0マクロファージに分化させたのち、バイオマテリアル上に播種し、その後の評価を行う手法を採用することで、系統的な評価が可能になると考えている。また、昨年度に報告したTHP-1細胞を旋回培養で分化させることで得られるM2型のマクロファージ凝集体を用いて、バイオマテリアルの免疫学的評価をin vitroで行った。その結果、セルロースとPETとPMMAとPTFEでは同組成の材料を用いた既報のin vivo研究と似た傾向があったものの、ナイロンでは異なったため、今後更なる検討が必要と考えている。
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