日本の死因別死亡率における心血管疾患の割合は15.3%と悪性新生物に次いで多く、そのうち39%を心不全が占めている(2017年人口動態統計)。心不全は左室駆出率(Left ventricular ejection fraction:LVEF)が低下したタイプの心不全(heart failure with reduced EF:HFrEF)とLVEFが保持されたタイプの心不全(heart failure with preserved EF:HFpEF)に大別される。HFrEFにはACE阻害薬やβ遮断薬など、生命予後を改善する治療薬が存在する。一方で、HFpEFに対しては生命予後を改善する薬物治療が確立されていないのが現状である。それに加えて、社会の高齢化に伴いHFpEF患者数が年々増加しているため、難治性心不全の患者数は増加の一途を辿っている。このような状況を改善させるためには、HFpEFに有効な治療法や薬剤を開発するための基盤となるHFpEFの病態発現の機序を明らかにする必要がある。申請者は心臓における異常タンパクが沈着するメカニズムに歯周病原細菌の感染によるオートファジー異常が関わっているのではないかと仮説を立て、研究を進めてきた。本年度はin vitro実験を行い、歯周病原細菌感染により、心筋細胞に異常タンパクが沈着する傾向にあることが明らかとなった。
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