研究課題/領域番号 |
21J22731
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
竹内 七海 東京農工大学, 大学院工学府, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
|
キーワード | ナノポア / microRNA / DNAコンピューティング / マイクロデバイス / ナノポア計測 / がん診断 / リキッドバイオプシー / 一分子計測 |
研究実績の概要 |
機能性RNAの一種であるmicroRNA (miRNA)はがんの種類特異的に発現異常を示すため、その発現パターンをバイオマーカーとして利用することが注目されている。本研究では、標的分子を一分子レベルで検出可能なナノポアセンシングに、DNA分子を用いた演算手法であるDNAコンピューティング技術を組み合わせることにより、体液中の低濃度なmiRNA発現パターンを高感度に検出する。液体生検で用いる診断マーカーの一つであるmiRNAはがん特異的な発現パターンを示すことから、がん診断に向けた高感度のmiRNA検出法が求められている。申請者はこれまでにDNAコンピューティング技術とナノポア計測を組み合わせた手法を用いて体液中のaM~fMレベルの超低濃度miRNA検出に成功したが、その検出機構は未解明であった。 本年度は、ナノポア計測によって超低濃度miRNAが検出される現象が体液サンプルだけではなく化学合成miRNAを用いた場合にも観察されることを確認した。体液サンプルから検出したmiRNAの配列とその検出に利用した診断用DNAを用意し、疑似体液サンプルを用いてナノポア計測を行った。様々な条件で化学合成miRNAのナノポア計測を行い、検出感度が上昇する条件を見出した。検出感度上昇のメカニズムを調査するため、診断用DNAを新しく設計した。さらに、ナノポア計測結果の解析手法をメカニズム調査に合わせて工夫した。本年度はこれらに関連する成果に関して、国際学会1件、国内学会2件において公表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目的はナノポア計測における超低濃度miRNA検出を実証し、メカニズム解明の手掛かりをつかむことであった。 本年度はナノポア計測と診断用DNAを組み合わせて用いることによりfMレベルの超低濃度化学合成miRNAが検出できることを確認し、体液サンプルにおける超低濃度miRNA検出を裏付けることができた。この濃度域はこれまで報告されてきたナノポア計測の検出限界を下回るものであった。また、疑似サンプルにおいては診断用DNAを用いることでfMレベルのmiRNAを定量可能であることが明らかになった。さらに、新たに設計した診断用DNAを用いた場合にもfMレベルの超低濃度核酸分子をナノポア計測によって検出できることが分かった。 以上より、本研究はおおむね順調に進展していると評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでにナノポア計測により従来の検出限界を下回るfMレベルの低濃度DNAを検出してきた。次年度は本現象のさらなる詳細を調査する。新たに用意した化学合成miRNAと診断用DNAを用いた実験的な条件検討を通して、標的miRNAに対応する診断用DNAの構造が低濃度検出にどのように影響するかを調査する。また、DNAと似た性質を持つ分子を診断用DNAの代わりに用いた場合に低濃度検出が観察されるかを調査することでメカニズム解明につなげる。さらに理論的なアプローチにより、標的miRNAと診断用DNAの複合体がナノポアに侵入する際のエネルギー障壁を調べる。
|