研究実績の概要 |
本年度は,前年度に実施した「光弾性法を用いた軟質基板内応力場計測手法の確立」の成果を論文としてまとめ,国際学会誌に投稿,掲載された(Yokoyama et al., Opt. Lasers Eng., 2024).また,「液滴粘度と基板弾性率が及ぼす液滴衝突力の影響解明」に取り組んだ.前年度に開発した応力場計測手法を用いて,液滴衝突時の軟質基板内応力場を非定常に計測することに成功した.これにより,従来の圧電素子等を用いた計測手法では困難だった,変形を伴う基板上での液滴衝突力の計測を可能にした.実験では,変形しない固体球と,粘度の異なるシリコーンオイルをポリウレタンゲルに衝突させた.計測した衝突力の最大値(最大衝突力)に着目し,それが液滴粘度と基板の弾性率によりどのように変化するのかを調査した.スケーリング則を用いた解析の結果,基板に作用する衝突力の最大値は,液滴粘度と基板弾性率の比を表す緩和時間と,衝突速度と液滴半径の比を表す衝突時間のバランスによって決定されることが示唆された.これらの成果は,国内・国外学会(第51回可視化情報シンポジウム,混相流シンポジウム2023,76th Annual Meeting of the APS Division of Fluid Dynamics,IUTAM Symposiumon Dynamics and Interface Phenomena of Bubbles and Droplets at Multiple Scales)で発表し,第51回可視化情報シンポジウムではベストプレゼンテーション賞を受賞した.本研究全体を通して,実験的難しさからこれまでほとんど行われてこなかった液滴衝突時の軟質基板内応力場の研究に対して,新しい実験手法の提案と,衝突力に関する基礎的な知見を得ることができた.
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