研究課題/領域番号 |
22J13389
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
山口 友亮 東京農工大学, 大学院連合農学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
|
キーワード | イネ / 生育予測 / UAV / リモートセンシング / 機械学習 / 深層学習 |
研究実績の概要 |
本研究は品種による形態の影響を受けない汎用性の高いイネの生育推定モデルの構築を主な目的とした。 当該年度は、まず、多様なイネ品種を対象にUAV空撮画像と実測の生育データの収集を行った。データ収集は本年度まで4年間継続して行っており、数千点のデータを蓄積した。 高精度のモデルの構築には、データセットの拡張が有効である。そこで、植物体のサンプリングを行う株数を縮小して効率的に構築したデータセットが、生育推定モデルの開発に利用可能であるかを調査した。その結果、単回帰分析に基づく生育推定モデルは、サンプリングの株数を縮小したデータから構築した場合でも、従来と同程度の精度を実現できることが明らかとなった。さらに、サンプリングの株数を縮小したデータは、機械学習モデルの予測精度の向上にも寄与できることが示された。既往の研究では、複数株のサンプリングに基づくデータを集約して1点のデータとし、データセットが構築されることが一般的であったが、今回の結果から、省力的に収集可能な単一の株に基づくデータセットもモデル開発に活用できることが示された。 以上の成果を活用し、多様なイネ品種群を含む計2000点以上のデータから成るデータセットを構築した。本データセットから様々な機械学習アルゴリズムを用いて生育推定モデルを構築し、モデルが適用可能な品種群を調査した。その結果、群落のテクスチャが複雑な品種群で比較的精度が低かったものの、明瞭な傾向は確認できなかった。これは、イネ品種についてデータが離散的であり、トレーニングに用いた品種群に対して内挿となる性質を持つような未知のイネ品種であっても、推定が困難であったことが一因であると考えられた。現在、イネ品種についてより連続に近いデータの生成に向け、異なる品種に由来するデータの融合を試みている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、必要なデータの収集が終了した。データセット構築の効率化に成功したため、開発中の汎用性の高い高精度生育推定モデルの基盤となるデータの拡張ができた。本研究成果は国内学会および国際学会にて発表した。また、本研究の主目的であるモデルの汎用性を高めていくうえで重要なデータに関する知見が得られた。さらに、関連研究として取り組んだ、RGB画像の解析により栄養指標値の推定モデルを構築した成果は日本作物学会紀事に掲載された。以上を総合的に勘案し、本研究計画はおおむね順調に進展していると評価する。
|
今後の研究の推進方策 |
ある品種群の中間的な性質を持つ品種群のデータを生成するため、種々のデータ補間処理の利用を検討していく。これにより、データの多様性を拡張する。 また、解析を通して一般にデータの少ない領域における精度が低い傾向が見られており、このことがモデルの汎用性に悪影響を及ぼしていると考えられる。そのため、さらなるデータ量の拡張手法を検討する。UAV空撮画像に大量に含まれるラベルなしの画像データの疑似ラベリングによる活用や、異なる切り取り範囲の画像から得られる数値情報群の統合手法の開発に取り組む予定である。
|