研究実績の概要 |
主に以下の二つの実験を行った。 一つ目は、酸化物基板上へのBa1-xKxFe2As2のエピタキシャル成長である。過去の実験から、フッ化物基板上に直接蒸着することではエピタキシャル成長する一方で、MgO(001)基板やサファイア基板などの代表的な酸化物基板上ではエピタキシャル成長しないことが分かっていた。入手可能な全ての酸化物基板上への直接成膜を試みたが、エピタキシャル薄膜は得られなかった。 そのため、酸化物基板上にバッファ層(中間層)を導入することを検討した。同じ鉄系超伝導体で良好なエピタキシャル成長が報告されているCeO2やFeをバッファ層として導入したが、エピタキシャル成長しなった。次に、高温で酸化物基板上に成膜が可能であるBaFe2As2をバッファ層にすることを検討した。MgO(001)基板上に設定温度上限である720℃でBaFe2As2バッファ層を成膜した後、400℃まで降温後Ba1-xKxFe2As2を成膜した結果、エピタキシャル成長した。試料は、最高で39.8 Kの高い超伝導転移温度を示した。また、断面透過型電子顕微鏡観察より、BaFe2As2バッファ層とBa1-xKxFe2As2が原子レベルで整合していることが確認され、バッファ層がエピタキシャル成長において重要であることが確認された。磁化測定より見積もられた臨界電流密度は単結晶を上回る3.9 MA/cm2であった。 二つ目は、MgOバイクリスタル基板上へのBa1-xKxFe2As2エピタキシャル薄膜の作製である。酸化物基板上へのエピタキシャル薄膜の作製が可能になったため、バイクリスタル基板上へエピタキシャル薄膜を成膜し、粒界特性の解明を試みた。基板の[001]方向にそれぞれ6°, 13°, 24°, 30°回転して圧着されたバイクリスタル基板上へのBa1-xKxFe2As2エピタキシャル薄膜の作製に成功した。
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