研究課題/領域番号 |
22J21824
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
居原田 遥 東京藝術大学, 国際芸術創造研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | アジアの文化芸術 / ミャンマークーデターとアート / タイ深南部 / 沖縄の文化芸術 |
研究実績の概要 |
2022年度は当初の研究計画に沿いつつ、より課題を明確にし、主に3つの対象:1タイで起きた民主化運動及びタイ深南部地域の自治獲得の運動下のアート、2ミャンマークーデターをめぐる運動下の文化実践、3「沖縄問題」をめぐる同地の社会運動と文化、または「アジア」の民主化運動との関係性に関して、調査を中心に研究を進めた。 具体的に1ではタイでの短期的な現地調査・参与観察を行い(2022年10月)、深南部の政治・社会的構造と沖縄の政治・社会的構造を比較した先行研究の整理を行いつつ、現地のアーティストへのヒアリングや芸術祭の視察、深南部での沖縄のアートに関する事例紹介等の活動として関与しながら調査を進めた。2では、自身がキュレーターとしてミャンマーのアーティストによる同主題の展覧会を開催(2022年5月)し、さらにはミャンマー現地でクーデターに呼応する目的で制作された芸術作品や映像作品を調査・分析しながら日本国内でそれらを紹介するプロジェクトに携わり、動向の把握や考察を進めた。3では沖縄での現地調査・参与観察を行い(2023年1月)、資料調査やアーティストへのヒアリングを行なった。また、アジアと文化芸術の最新の動向を把握するために愛知県で開催されている国際芸術祭の視察(2022年8月)、福岡県では在日ミャンマー人のコミュニティの視察や専門機関においてアジア美術の蓄積に関する文献調査(2022年8月)に取り組んだ。なお研究成果の発表・発信として、国際学会1回の個人発表に参加、国内学会1回の個人発表に参加し、論文(査読有)1本を投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究当初の計画通り、おおむね順調に進んでいると捉えている。理由は、1年目の研究目的として設定した、国外の事例調査を含む研究対象への調査活動の予定が、計画通り進んだことであり、その成果を踏まえ、研究全体の進捗として考えても、滞りはないと捉えている。研究計画で想定していた国外を含む対象地域での2箇所での参与観察は充実した調査の成果があり、ヒアリングや芸術作品の収集など、次年度以降に発展させる必要のある分析対象の資料収集は順調といってよい。とりわけ、研究計画当初、懸念していた国外での調査活動時の新型コロナウィルス感染症と、水際対策による渡航制限等の影響はあまりなく、現地調査も実施出来ている。一方で、戦争などに伴う物価の高騰、そして水際対策の規制緩和に伴う対象国でのインバウンドの影響があり、研究計画時の想定より、旅費をはじめ現地調査にかかる費用が大きい。そのため、国外での活動日数の短縮するなどの対策が必要ではある。また、研究成果の発表という点においては、2022年度からはさまざまな学会や研究会の対面開催が再開され、そうした機会にも十分に恵まれたなかで、国際学会を含む2回の学会参加が達成できた。しかし、欧州での国際学会の参加時は、戦争に伴う航空費の高騰により、現地参加を断念し、オンラインでの参加とした。
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今後の研究の推進方策 |
2年目、3年目の研究も当初計画通り進めていく予定である。2年目は、1年目に引き続き研究対象への調査活動を中心的に進め、国外であるタイ、そして国内での参与観察を行う。また1年目よりも、研究の進捗報告、研究成果の発信の機会を増やすために、論文の執筆と投稿・発表、また学会への参加を積極的に行う。また3年目の博士論文の執筆を含む研究の達成に向けて、研究内容の整理や理論的枠組の整理という点に、より時間を割く。 一方で、前述した通り、戦争の影響により、とりわけ国外での調査にかかる費用が想定より高騰していることを念頭に、渡航を伴う調査、学会発表の準備は速やかに進めていく。また研究対象にタイやミャンマーを含むことから、同地の政治状況に十分に配慮し、それらの状況によっては、同地の在住の研究対象者へのインタビューなどの接触を含む調査は、予定より早めに進めていく必要があるものとして想定し、研究を進める。
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