研究実績の概要 |
ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)ジス ルフィド(BiTEMPS)骨格は加熱するだけでラジカル的に開裂し、発生したラジカルを介して結合交換反応を引 き起こす。本研究では、BiTEMPS骨格で連結された動的な大環状分子 (MM) を用いた『空間連結型の高分子』の合成方法を確立することを目的に研究を行ってい る。2022年度は、MMの合成法を利用したカテナン分子の単離と特性評価を中心に研究を進めた。特に大環状ビピリジンを利用したCuAAC (銅触媒アジド-アルキンクリック反応) を活用したロタキサン合成に着目してBiTEMPSを両端にもつロタキサンを合成し、その環化反応を行うことでカテナンの簡便な合成を達成した。合成したカテナンについて、NMRやMS、単結晶X線構造解析によりその構造を明らかにした。 以上のように、通常では合成が難しいカテナンを加熱のみで合成することに成功した。また、得られたカテナンはBiTEMPS構造に基づく動的な特性を有し、重合反応による分子ネックレスの合成へと展開できる。この成果や昨年度までで得られた成果について、来年度に国際的な学術誌に発表する予定である。その他には、昨年度に得られた成果について複数の国内および国際会議にて発表を行った。特に、新型ウイルスにより自粛を余儀なくされていたオフラインでの学会に積極的に参加し、国内および国外の研究者との質疑を行った。
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