研究実績の概要 |
本研究では、動的な環状分子を用いて「環構造の形成」と 「架橋構造の形成」を同時に達成 する新しい『空間連結型の高分子の合成法を確立』し、得られる架橋高分子の物性・機能を明 らかにすることを目的とする。動的な化学構造としてビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)ジス ルフィド(BiTEMPS)骨格に着目し、その特性を活用して種々の特殊構造高分子合成を行った。 BiTEMPSは加熱するだけでラジカル的に開裂し、発生したラジカルを介して結合交換反応を引き起こす。本研究では、BiTEMPS骨格で連結された動的な大環状分子 (MM) を用いた『空間連結型の高分子』の合成方法を確立することを目的に研究を行っている。 2021年度は、環状高分子と環状高分子が空間的に連結した高分子 (MICP) の合成手法の確立を目指し研究を進めた。MM中に超分子相互作用部位を導入し、それらの相互作用を駆動力とした合成法を試みた。その結果、MICPの生成を示唆する結果が得られたため「BiTEMPS含有大環状分子に超分子相互作用導入することでMICPを加熱のみで得る」というコンセプトが実証された。 2022年度は、MMの合成法を利用したカテナン分子の単離と特性評価を中心に研究を進めた。特に大環状ビピリジンを利用した銅触媒アジド-アルキンクリック反応を活用したロタキサン合成に着目してBiTEMPSを両端にもつロタキサンを合成し、その環化反応を行うことでカテナン合成を達成した。合成したカテナンについて、NMRやMS、単結晶X線構造解析によりその構造を明らかにした。 2023年度は、研究期間で実施した実験についてのブラッシュアップやデータの論文化を完了させた。研究課題に関連する論文を2023年度中に新たに3本以上執筆し、すべてアクセプトされた。特にカテナン合成に関する論文はOrg. Biomol. Chem.誌のカバーピクチャーに採択された。
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