研究実績の概要 |
強靭な機能性高分子材料の創製を目的とし、本研究では、動的共有結合を利用した高分子の一次構造制御に着目した。動的共有結合の一つであるビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)ジスルフィド(BiTEMPS)骨格は、熱によりその動的特性のOn-Offを簡便に制御できる。当研究室では、これまでBiTEMPS骨格の結合交換反応を駆動力とした高分子の構造再配列を利用し、BiTEMPSを一つのみ有する環状化合物の合成を達成している。しかしながら、本手法を高分子に適用した際は、環状高分子に加え副生成物として生じる線状高分子を除去することが困難である。 そこで、本手法を高分子へと拡張するため、環状高分子と線状高分子の分離手法について検討した。環化反応の際に副生成物として生成する線状高分子の末端をアクリレートに変換し、チオールを表面に有するポリスチレン粒子と反応させ、不溶不融の微粒子上に固定化することで濾過により簡便に不純物を除去することに成功した。また、4分岐高分子を本手法に適用し、同様に反応性粒子を利用した精製を行うことで、末端を持たない「8」の字型高分子の単離に成功した。得られた8の字型高分子は適切な濃度で加熱することで架橋高分子に変換できることも明らかにした。「8」の字型高分子のアプリケーションとして、ホットプレス機を用いた熱圧縮法によりバルク条件下で透明なエラストマーを合成することにも成功した。さらに、8の字型高分子と環状高分子を所定の比率で混合することで得られる架橋高分子の物性がそれらの仕込み比によりチューニングできることもわかった。
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