研究課題/領域番号 |
21J21388
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
張 葉平 東京工業大学, 物質理工学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 光触媒 / 温度 / 圧力 / 回転ディスク電極 / バンドギャップ |
研究実績の概要 |
本年度は、(1)圧力が光触媒の物性に与える影響の調査、(2)C2+(炭素鎖が2つ以上の炭化水素)生成のためのパラメータ最適化、(3)研究課題解決において必須となる光触媒の反応温度上昇の影響の調査を行った。 (1)圧力依存性については、in-situ紫外可視分光測定系を設計、構築、測定した。その結果、バンドギャップは物質の結晶性に応じて変化しやすさが変わることがわかった。圧力を変化させた状態での反応を進めるにあたって必要な知見が得られた。 (2)パラメータが多い実験系において効率的に最適条件を探索するためにベイズ最適化プログラムを実装し、それに基づいて反応条件探索を行った。履歴に応じた活性の変化やノイズの問題、可視化のが今後の課題となった。 (3)反応温度上昇が活性に与える影響を調べるために光触媒回転ディスク電極測定系を構築し、測定、考察した。この実験系では光触媒特有である光励起キャリアの注入ステップについて調べることができる。そもそも光触媒に回転ディスク電極を適用した研究例は少なく、測定や解析が体系化されていない。そこで、実際に光照射及び温度制御が可能な回転ディスク電極反応容器を作製し、実際に光量と回転数を制御して温度依存性を測定した。その結果、一般の暗所における電気化学とは異なる光触媒特有の観測電流挙動が得られ、それについて考察をした。さらに、観測電流-回転数曲線の温度依存性を調べることにより、反応温度、光量、攪拌が光触媒の電荷注入ステップに与える影響について検討した。これらの結果は、光触媒反応における電荷注入ステップの理解を深めるだけでなく、一般の光触媒反応について、量子収率を向上させるための指針を与えたと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画は、圧力が光触媒の物性に与える影響を調べることとC2+生成のためのパラメータ最適化を開始することであった。今回反応を行う圧力域に関して、バンドギャップ変化の評価を終え、C2+生成のためのパラメータ最適化を開始することができたため、おおむね順調に進展していると評価した。さらに、本実験において重要となる温度依存性について議論を深めることができた。光照射時の昇温の影響だけで非常に難しいことがわかり、かつそこが非常に重要であることがわかった。光触媒の温度依存性は本研究の対象であるメタン改質のみに適応されるサイエンスではなく、一般の光触媒反応に対して理解を深めるものである。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画はC2+生成のための最適な触媒と最適な反応条件を探し出しつつ、メカニズムを解析していくことである。 C2+の生成のための最適条件の探索に関しては、昨年度実装したベイズ最適化プログラムを用いて効率的に最適値を探索する。本年度の課題として、反応活性が履歴に依存するという問題、ノイズに対する耐性が弱い問題、可視化に課題があるので、プログラムに時間依存性の情報を加えることなどの改善をしていきたい。 メカニズム解析については、光触媒のプロセスを細分化してそれぞれのステップを取り出して調べる。具体的には、表面における電荷注入を含む触媒反応プロセスの温度依存性をin-situ FTIR(フーリエ変換赤外分光法)により測定したいと考えている。In-situ FTIRは反応を起こしながらFTIRを測定する手法で表面における反応中間体をとらえることができる。温度上昇に伴い増加する中間体や減少する中間体、ピークのシフトを観察することにより温度上昇により起こる変化を観察する。なお、プローブ用に一つの反応を選択するが、極力一般の光触媒反応に関して議論できるように工夫する。また、温度上昇に伴うバックグラウンドの変化など注目する変化以外の変化を排除できるよう対照実験を十分に行う。
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