研究課題/領域番号 |
21J21481
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
道蔦 汐里 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 新宗教 / 天理教 / 治病儀礼 / 教団イベント |
研究実績の概要 |
2021年度は、おもに①信者の語りの特徴に関するテキストマイニング研究、②コロナ禍における新宗教教団の治病儀礼に関する文献(機関誌)研究、③新宗教教団の儀礼に関する先行研究および一次資料の収集と整理に着手した。 ①については、新宗教教団の教育機関が発行する文集に記載された762名分の体験談をテキストマイニングにより整理・分析することで、新宗教教団の年中行事の重要性や、聖地の聖性が変わらずみられることが確認された。加えて、信仰の語られ方が親族や教会からの影響ではなく、個人の感情・体験として記述されるようになったことも示唆された。なお本成果は、2021年6月の「宗教と社会」学会にて、「「旧」新宗教における信仰のあり方の時代変化――教育機関の文集分析から」と題して、口頭発表(オンライン発表)をおこなった。 ②については、事例として選定した3つの新宗教教団(解脱会・崇教真光・天理教)において、新型コロナウイルス感染症の世界的流行は、「人類に課せられた使命」、あるいは「(各教団の)理想とする世界に近づくことができない人間の至らなさの具現である」といった理解が共通してなされていたことを、各教団が発行する機関誌の分析を通し、整理・確認した。なお本成果は、2021年9月の日本宗教学会にて、「コロナ禍における新宗教の治病儀礼」と題して、口頭発表(オンライン発表)をおこなった。 ③については、図書館や教団の本部におもむき、新宗教教団の儀礼・教団イベントに関する先行研究および資料の収集などに着手した。具体的には、阿含宗、天理教、トゥルース教、辯天宗などの教団施設へおもむき、祭典・行事の現地調査、一次資料の収集、それらの整理をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究実施計画において2021年度は主に、①先行研究や資料の収集・整理、②アーカイブ作成、③質的調査のための予備調査等を実施する予定であった。 実際の成果として、教団が実施する儀礼・イベントの調査に一部着手することはできた(③)。しかし、新型コロナウイルスによる参拝者制限、外部からの訪問の自粛呼びかけの実施等により、イレギュラーな状態で催行されていたものであるといえることから、当初の目的を十分に達成したとはいえないと思われる。 一方で研究実施計画のうち、①先行研究や資料の収集・整理などは実施することができた。また、先行研究収集の過程で、特に欠けていたと思われる視点を看取することもできた。加えて、新型コロナウイルス感染症流行という状況下ではあったが、その状況を利用し、新宗教教団が現代の感染症をどのように捉えているかという観点で口頭発表をすることもできた。これらには、研究計画提出時には構想していなかった新たな課題に取り組めたという意義も見出すことができる。 しかし、本研究の重要な要素である質的調査が十分におこなえなかったという点や、口頭発表の論文化には至らなかった点、アーカイブ作成(②)の遅延という点などから、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、①資料調査により得られた知見の論文化と、②質的調査の充実を主な優先課題とする。そのために、これまで収集した先行研究や資料を精査していくとともに、新たな資料の収集ができるよう、追加の資料調査を実施することなどにより充実化を図っていく。加えて、新型コロナウイルスの感染拡大状況を注視しながらではあるが、2021年度に十分実施することができなかった質的調査に、可能な限り着手したいと考えている。
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