研究課題/領域番号 |
21J21481
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
道蔦 汐里 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 新宗教 / 天理教 / 崇教真光 / 死者儀礼 / 葬儀 |
研究実績の概要 |
2022年度は主に、①新宗教の死者儀礼と現世主義に関する研究、②新宗教と伝統宗教との死者儀礼における合致点・相違点に着目した研究、③新宗教が実施する儀礼への参与観察・聞き取り調査・資料収集に着手した。 ①については、現世主義が特徴とされる新宗教において、死者儀礼がどのような意味をもち、どのように整備・実施されてきたのかを考察した。その結果、現世主義が特徴の新宗教でも墓は重要視されることや、教義的に示されていない儀礼において、教団色を出せるもの・出せないものが存在すること、教団式葬儀が「布教」の文脈で語られる場合があることなどが明らかとなった。なお本成果は、2022年9月の日本宗教学会第81回学術大会にて、「新宗教の死者儀礼と現世主義―天理教を中心に―」と題して、口頭発表(オンライン発表)をおこなった。 ②については①での発表を発展させ、伝統宗教の儀礼をモデルとした新宗教の儀礼における、伝統宗教の儀礼との影響関係を、神道系新宗教である天理教の死者儀礼(葬儀)を事例として分析をおこなった。その結果、儀礼の「借用」「文脈化」「独自化」状態という概念が析出された。また、天理教式葬儀は教団内でも位置付けについて見解が分かれる儀礼であったが、これは儀礼の「借用」「文脈化」「独自化」状態のモザイク的構成に由来することが原因であると示唆された。なお本成果は、2023年3月発行の『儀礼文化学会紀要』11号に、「新宗教の死者儀礼における「借用」「文脈化」「独自化」―天理教の葬儀を事例に―」と題して、研究ノートが掲載された。 ③については、各教団の図書館・本部・教会・支部などにおもむき、新宗教教団の儀礼への質的調査、資料収集・整理に着手した。具体的には、崇教真光の道場や、天理教の本部や複数の教会におもむき、祭典・儀礼の参与観察、信者への聞き取り、資料の収集、それらの整理をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画において2022年度は主に、①先行研究・資料の継続収集、②資料調査により得られた知見の論文化と、③質的調査の充実を優先課題としていた。特に②に関しては、新宗教の儀礼における思想的・組織的な特徴に関する論文執筆に着手する予定であった。 実際の成果として、②に関しては天理教の死者儀礼に関する学会発表や、葬儀に関する研究ノートの刊行に至っており、神道系新宗教の死者儀礼研究の更新という点では進展があったといえるが、論文化には至らなかった。 一方で研究実施計画のうち、①先行研究・資料の継続収集、③質的調査などは定期的に実施・着手することができた。特に、追加資料の収集ができているという点や、教団本部で実施される儀礼・イベントへの参与観察を定期的に実施できたという点では、進捗を見出すことができる。 しかし、当初目的としていた知見の論文化に至れなかったという点や、教団本部以外の調査の充実化が図りきれなかったという点から、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、①これまで未調査であった儀礼に関する考察を優先課題とする。加えて、②これまで取り上げてきた儀礼の再検討、収集した資料の精査も実施していく。そのために、教団本部や図書館訪問等による資料調査を継続することで、未調査であった儀礼に関する資料を収集するとともに、それらの整理・分析を試みる。加えて、これまで取り上げてきた儀礼に関する新たな資料の収集・精査も実施していく。また質的調査では、教団本部での調査に加え、各地の支部・教会に赴き、参与観察・インタビュー調査を実施する。これにより得られたデータの論文化を目指す。
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