研究課題
イオン伝導体は燃料電池やセンサー、触媒に応用可能なセラミック材料である。しかし、燃料電池の電解質として実用化するには高いイオン伝導度を示す材料の発見が必要となる。そこで、六方ペロブスカイト関連酸化物であり、本質的な酸素欠損層を持つBa7Nb4MoO20系材料に注目して研究を行った。Ba7Nb4MoO20のNbとMo比を変えた組成Ba7Nb4-xMo1+xO20+x/2を合成し、電気的特性の評価をし、最も伝導度の高いBa7Nb3.8Mo1.2O20.1を発見した。Ba7Nb3.8Mo1.2O20.1は乾燥雰囲気下では306 oCで実用材料のYSZより175倍高いバルク伝導度を示す。また、湿潤雰囲気下でのバルク伝導度は326 oCで2.7 mS/cmであり、高いデュアルイオン(酸化物イオン+プロトン)伝導度を示す。Ba7Nb3.8Mo1.2O20.1について、中性子回折実験とリートベルト解析、最大エントロピー法によって中性子散乱長密度分布を計算し、本質的な酸素欠損層で格子酸素と格子間酸素による準格子間機構で酸化物イオンが拡散することが示された。(Ba7Nb3.8Mo1.2O20.1)9の第一原理分子動力学シミュレーションによって、M2O9二量体、MO4四面体、MO5 多面体 (M = Nb, Mo)が生成・消滅することで酸化物イオンが移動するメカニズムであることが分かった。また、(Ba7Nb3.8Mo1.2O20.1・0.1 H2O)9についても第一原理分子動力学シミュレーションを行い、プロトンは初期位置として本質的な酸素欠損層よりも酸素が最密充填した層に配置した時の方が平均二乗変位は大きく、酸素が最密充填した層の方がプロトンは動きやすいことが示唆された。以上の研究成果がChem. Mater.に掲載された。また、日刊工業新聞に掲載された。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)
Nature Communications
巻: 14 ページ: 2337-2346
10.1038/s41467-023-37802-4
Chemistry of Materials
巻: 35 ページ: 9774-9788
10.1021/acs.chemmater.3c02378