アルカンの有用物質への直接転換は資源の有効利用等の点から非常に重要であるとされている。本研究では、アルカンとベンゼン等の求核剤との脱水素カップリングによるアルキル基の直接導入を目的とした。脱水素カップリングは水素の再結合のステップが鍵の一つであり、一つの活性点で生成した水素原子が別の活性点で再結合するという水素の逆スピルオーバー現象が応用できると考え、この現象を利用した混合触媒系の開発を現在まで行ってきた。今年度も引き続き、[1] 固体酸と担持金属の混合触媒の様々なアルカンと求核剤の脱水素カップリング反応への適用、[2] 反応前後の触媒構造解析や様々な実験、測定による反応機構の調査、[3] 触媒調製法等の最適化によるより高活性な触媒の探索を試みた。 これまでに高活性であることが分かっている担持白金と固体酸の混合触媒を用いることで、アルカンによる種々の求核剤へのアルキル基の導入が可能であり、本触媒系は幅広い基質適応性を持つことが分かった。 反応前後の触媒構造解析は、XRDやXAFS、TEM等を用いて行い、担持白金の本反応における活性種は0価の粒子でありその粒径が反応活性に影響を与えることがわかった。また、様々な実験や測定等から担持白金は固体酸によるアルキル化反応を促進する効果があることが示唆され、本研究において提案する水素の逆スピルオーバーを利用した反応促進機構であることを強く支持している。 白金粒子の粒径が反応速度に影響を与えることから、触媒調製法及び担体調製法を最適化することで、白金粒子の微粒子化に成功し、反応活性の向上を可能にした。
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