研究課題/領域番号 |
22J00260
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京工業大学 |
特別研究員 |
辰馬 未沙子 東京工業大学, 理学院, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | 惑星形成 / 微惑星形成 / ダスト / 数値シミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究では、天文観測や太陽系探査と整合的な惑星形成論を確立するため、0.1 μmの大きさの固体微粒子(ダスト)が0.1 mm程度の大きさに密に集合し(ペブル)、そのペブルがさらにゆるやかに集合するという「階層集合体」に着目している。今年度は、ペブルそのものの形成過程の検討を行った。研究内容としては、(1) ダスト集合体に横ずれの力を加えたときにできる「ダマ」がペブルとなる可能性を探り、(2) 天文観測により明らかとなっているペブル内部密度から、一度100 kmほどの大きさの微惑星まで成長し、その破片としてペブルが形成されたという仮説を検証した。 (1)では、ペブルをダスト粒子計算で扱うため、衝突計算コードの準備とテスト計算を行ううちに、ダスト集合体に横ずれの力(せん断力)を加えた際にできる「ダマ」がペブルになるのではないかという着想を得て、すでに計算済みであったダスト集合体のせん断計算結果の解析を行った。その結果、ダスト集合体はせん断力により引き伸ばされるものの、ダマにはならないことが判明した。さらに、ダスト集合体のせん断強度が引張強度と同程度であることが明らかとなり、その結果を用いて彗星のせん断強度と比較することで、彗星の構成粒子半径を制限することに成功した。本研究について国内会議での口頭発表を3回行い、本研究をまとめた論文を現在執筆中である。 (2)では、天体内部の重力と圧縮強度による力のつりあいを計算し、ダスト集合体のバルク密度と半径を求めるために必要なダスト集合体の圧縮強度モデルを作成することに成功した。本研究についてまとめた論文は査読を経て国際学術誌に掲載され、国内会議での口頭発表を3回、招待講演を1回行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ダスト集合体に横ずれの力(せん断力)を加えた際にできる「ダマ」がペブルになるのではないかという着想を得て、すでに計算済みであったダスト集合体のせん断計算結果の解析を行った結果、ダスト集合体はせん断力により引き伸ばされるもののダマにはならないことが判明したが、当初の想定に反し、ダスト集合体の圧縮強度における新しい理論を構築することに成功したため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、(1)ペブル同士の接触相互作用のモデル作成と、(2)階層集合体(ペブルの集合体)としてのダスト成長理論の確立を行う。(1)については、私がすでに使用している計算コードを用い、ペブル間の接触相互作用をフックの法則とバネ定数を用いて記述し、弾性体として可逆的にふるまう臨界変位を求め、論文にまとめて発表する。このように、ペブルをマクロな弾性体に近似して階層集合体を取り扱うことで、計算コストの大幅な削減が可能となる。 (2)については、(1)で作成したモデルで記述されるペブルの集合体、すなわち階層集合体を作り、天体への応用に向けた基礎的な量として、3種類の物質強度である圧縮強度、引張強度、せん断強度を数値シミュレーションにより求める。そして、研究結果を論文にまとめて発表する。さらに、その応用として、圧縮強度と自己重力がつりあうときの直径と内部密度を計算し、太陽系小天体や一様集合体の結果と比較し、論文にまとめて発表する。
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