マイクロ流体デバイスでは,数百μmの流路を用いて,均一な液滴を生成し,機能性材料の生産,高精度な生化学分析を実現できるため,広い分野での応用が期待されている.その中でも,マイクロサイズのポストが多数並んだポストアレイデバイスは,目詰まりに強く,マイクロ液滴を効率よく生成する手法として知られていたが,生成される液滴のサイズを予測する物理モデルが明らかでなかった.そこで,本研究では液滴の分裂挙動を明らかにするために,ポスト形状・サイズを変更して,分散相(油相)と連続相(水相)の体積比率や総流量を変化させて生成された液滴サイズを網羅的に計測した.その結果,従来の連続相粘度のみから計算されるキャピラリー数では,生成される液滴サイズを予測することができないことがわかった.そのため,ポストアレイデバイスでは,分裂した分散相自体が,エマルションを形成することで,エマルションとしての粘度が,液滴の分裂に無視できない影響を与えていることがわかった.そこで,エマルションの粘度を考慮した,有効キャピラリー数を計算することで,ポストアレイデバイス内での液滴分裂を支配するせん断力の大きさをより正確に表現することができた.さらに,ポスト形状として,四角形や六角形など形状を変化させた結果,生成される液滴サイズやせん断力の上昇に伴う液滴サイズの減少傾向に違いが現れることがわかった.このことから,これまでポスト形状が液滴生成挙動へ与える定量的な評価が,困難であったが,これらの指標を用いることでポスト形状の最適化などを押し進める事ができる.
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