研究課題/領域番号 |
22J11242
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
吉本 将隆 東京工業大学, 物質理工学院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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キーワード | 光蓄電池 / 光インターカレーション / 光電気化学 / リチウム電池 / 全固体電池 / 放射光X線回折 / エピタキシャル薄膜 / 酸化チタン |
研究実績の概要 |
令和4年度は,(1)積層型の全固体光蓄電池の作製,(2)光電気化学測定による特性評価,(3)Operando X線回折法を用いた光充電中におけるLixTiO2電極の結晶構造変化測定,という3つの研究に取り組んだ. (1):物理蒸着法を用いて,LaSrAlO4(001)基板上に,集電体CaRuO3膜,光電極NbドープTiO2膜の順に積層した.X線回折測定,X線反射率測定から,エピタキシャル成長した光電極/集電体膜の合成を確認した.この上に,非晶質固体電解質Li3PO4膜,負極リチウム膜の順に積層することで,積層型の全固体光蓄電池を作製した. (2):暗所充放電測定では,anatase型TiO2へのリチウム脱挿入に起因する電位平坦部が観測されたことから,電池の動作を確認した.カットオフ電圧に到達し,定電圧充電時の電流が落ち着いた後に光を照射することで,光充電を試みた.カットオフ電圧を2.5 V以上に保持した場合,光照射時に電流が観測された.光電流により得られた光充電容量に対し,放電容量はほぼ同じであることから,可逆的な光充電-放電を確認した.光照射により生成した正孔は,LixTiO2の遷移金属であるTiを3価から4価へと酸化し,その電荷補償としてリチウムが脱離した(光充電した)と考えられる. (3):放射光施設SPring-8において,Operando X線回折測定によりLixTiO2電極の結晶構造変化をその場測定した.暗所充電時と比較して,光充電時のLixTiO2 004反射は,よりダイナミックな変化を観測した.これより,光を駆動力としてリチウムが脱離していることを実証した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目標は,光電気化学・固体化学・分光学的な薄膜評価手法を組み合わた多角的な測定を行うことで,光インターカレーションの反応原理を解明することである.令和4年度は,光を駆動力としてリチウムが脱離している固体化学的証拠を掴むことを目標とした. 光電極からのリチウム脱離を実測するためには,1)光照射時に電解液の分解などの副反応が発生せず,光充電-放電容量が定量評価可能,2)光充電-放電中の光電極の結晶構造変化を測定可能,の2つを満たす光蓄電池を作製し,光電気化学測定とX線回折測定の結果を対応させる必要がある.そこで,これらを条件を満たすため,TiO2エピタキシャル膜を光電極として採用した積層型の全固体光蓄電池の作製し,可逆的な光充電-放電を確認した.さらに,放射光X線回折法を用いて,光充電-放電中の光電極LixTiO2の結晶構造変化をその場観察することに成功した. 光充電-放電容量が定量評価しながら,光電極の結晶構造変化をその場観察した報告はこれまでなく,光照射によって光電極TiO2からリチウムが脱離することを初めて実測した. 以上より,2ヵ年の研究計画に基づき,順調に研究が進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
2年目である令和5年度は,光充電-放電中における光電極TiO2/固体電解質界面近傍のエネルギーダイアグラムの作成を目標とする.目標達成に向けて,(1)支持型の全固体光蓄電池の作製,(2)光電気化学測定による特性評価,(3)光電子分光法による光電極/固体電解質界面近傍の電子状態計測,の3つに取り組む. (1):光電子分光法は,表面敏感な測定法である.そこで,光電極が電池表面に剥き出しになっており,光電極/電解質界面が表面に近い電池構成である,支持型の全固体光蓄電池を作製する. (2):積層型の全固体光蓄電池では,TiO2光電極/Li3PO4固体電解質界面を合成した.支持型の全固体光蓄電池では薄膜の積層順が異なるため,TiO2光電極/Li3PO4固体電解質界面を合成できない.そこで,固体電解質を支持型の全固体光蓄電池でも,積層型と同様の光充電-放電が進行するかを検証する. (3):紫外光電子分光法や低エネルギー逆光電子分光法,硬X線光電子分光法を用いて,TiO2光電極/固体電解質界面近傍の電子状態を実測する.光電気化学測定の結果と合わせて,光充電-放電中におけるTiO2光電極/固体電解質界面近傍のエネルギーダイアグラムを作成する.
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