令和5年度は,(1)支持型全固体光蓄電池の作製,(2)光電気化学測定による特性評価,(3)光電子分光法による光電極/固体電解質界面近傍の電子状態計測,の3つに取り組んだ. (1): 物理蒸着法を用いて, 固体電解質基板の片面に光電極NbドープTiO2膜を室温成膜後,ポストアニールで結晶化した.もう片面に非晶質固体電解質Li3PO4膜,負極リチウム膜の順に積層することで,支持型の全固体光蓄電池を作製した. (2): 暗所充放電測定では,anatase型TiO2へのリチウム脱挿入に起因する電位平坦部が観測された.光照射下で充放電測定を行うと,初めの数サイクルは不可逆容量が見られたが,その後は可逆的な光充放電が確認できた.不可逆容量が観測されなくなった後でも,光照射前と比べて可逆的な充放電容量が増大していたことから,光照射によってLixTiO2からリチウムが脱離していると考えられる. (3): 硬X線光電子分光測定により,ex situにてLixTiO2電極の電子状態を観測した.Ti 2pのスペクトルは,4.5 V光充電後,3.0 V光充電後,1.0 V暗所放電後の順に,結合エネルギーが高エネルギー側に存在した.高電位で光を照射した方が電極中のTi4価の割合が多かったことから,光照射によりLixTiO2電極からリチウムが脱離していることを電子状態の測定から実証した.
本研究では,Nbドープanatase型TiO2膜を光電極として選定し,リチウム光脱離の反応解析を行った.電極/電解液界面では不安定であった光電気化学反応が,anatase型TiO2/固体電解質界面では,可逆的に進行することを明らかにした.さらに,光充放電中のanatase型TiO2の結晶構造や電子状態を調べることで,光照射によって光電極TiO2からリチウムが脱離することを初めて実証した,
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