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2022 年度 実績報告書

20世紀東アジアにおける宗教交流と思想連鎖―道院世界紅卍字会と大本教の連合運動―

研究課題

研究課題/領域番号 22J12284
配分区分補助金
研究機関東京工業大学

研究代表者

玉置 文弥  東京工業大学, 環境・社会理工学院, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2022-04-22 – 2024-03-31
キーワード大本教 / 道院・世界紅卍字会 / アジア主義 / 超国家主義 / 「満洲国」 / 橋川文三 / 民衆宗教
研究実績の概要

本研究では、20世紀前半の中国で勃興した宗教・慈善団体「道院・世界紅卍字会」と、同時期に日本で発展した民衆宗教「大本教」の提携関係を歴史学的実証によって明らかにし、両者の連合運動(1923~1935年)が、「満洲国」建国など当時の日中間の政治状況、さらにはその社会の草の根レヴェルにどのような影響をおよぼしたかについて、アジア主義・超国家主義といった政治思想史の観点から考察する。以上から、連合運動の全体像を立体的に明らかにし、アジア主義・超国家主義における宗教の存在を明らかにすることを目指す。
本研究の計画のうち、今年度は主に研究計画の第一段階、すなわち活動実態の実証的分析を重点的に行った。具体的には、史資料の発掘とそれをもとにした学会・研究会発表、論文執筆である。
史資料の発掘については、大本教学研鑽所資料室(京都府亀岡市)や国会図書館(本館・関西館)などにおいて、教団機関誌や事務資料等の一次史料、回顧録等の文献など関係資料を数多く収集した。
学会・研究会発表については、大小4つの学会等において発表を行い、それぞれ連合運動の1920年代の実態解明に重きを置いたもの、そしてそれをアジア主義・超国家主義思想に位置づける内容を発表した。
論文執筆については、査読付きのものを含め3本が刊行された。学会・研究会発表の内容をブラッシュアップしたものがその中心であったが、「世界宗教連合会」や「世界紅卍字会後援会」などこれまでの研究ではあまり注目されてこなかった活動の実態を明らかにし、また宗教・政治思想について、すべての宗教の根は一つであるという「宗教統一」思想をアジア主義・超国家主義と関連させて論じた。
以上のように、今年度は計画していた第一段階の活動内容を確実に進めることが出来、第二段階の計画の準備が整った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度は、研究計画の第一段階すなわち、史資料の調査および学会・研究会発表、論文執筆を重点的に行ったが、いずれも順調に進んでいる。
史資料の発掘に関しては、対象である大本教団において調査を行い、戦前期の教団が発行していた機関誌紙や事務資料等の一次史料、写真資料などを発掘した。さらに国会図書館(本館・関西館)や、神戸市所在の神戸華僑歴史博物館などにおいては、主に紅卍字会の日本における展開に関する資料(新聞・私文書・回顧録等)を多く発掘した。
学会発表に関しては、「宗教と社会」学会、日本宗教学会、日本思想史研究会(京都)、アジア共創塾Jセミナーの大小合わせて4度行い、それぞれ連合運動の実態解明に重きを置いたもの、そしてその思想史的位置づけの初期段階としてものを発表した。一方論文執筆に関しては、連合運動の活動実態からアジア主義・超国家主義の思想的位置づけを目指す論文を執筆し、査読のものを含め3本が刊行された(「「宗教統一」とアジア主義―大本教と道院・世界紅卍字会の連合運動「世界宗教連合会」の活動実態から」『宗教と社会』28号、2022年、「時代精神と宗教―超国家主義としての大本教」中島岳志・杉田俊介編『橋川文三―社会の矛盾を撃つ思想 いま日本を考える』河出書房新社、2022年、「第二次大本事件が残したものー日中戦争・「大東亜戦争」下における道院・世界紅卍字会の「日本化」」『コモンズ』2号、2023年)。主に学会発表の内容をブラッシュアップしたものが中心であるが、そのうち1本に対して学会奨励賞が与えられ、学術界において高い評価を受けた。
以上のように、着実に成果を挙げることが出来たと考えている。

今後の研究の推進方策

今年度に引き続き、大本教団等での関係史資料の発掘を行い、主に1930年代の「満洲国」および、日本国内での超国家主義運動「昭和神聖会」の実態解明を行いつつ、アジア主義・超国家主義思想への位置づけを本格化させる。その際、両教団の宗教思想の比較も行う。以上をもとに、連合運動の実態解明とその思想的位置づけを行う博士論文を執筆する。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 2件) 図書 (1件) 備考 (3件)

  • [雑誌論文] 第二次大本事件が残したものー日中戦争・「大東亜戦争」下における道院・世界紅卍字会の「日本化」2023

    • 著者名/発表者名
      玉置文弥
    • 雑誌名

      コモンズ

      巻: 2 ページ: 95-131

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 「宗教統一」とアジア主義 : 大本教と道院・世界紅卍字会の連合運動「世界宗教連合会」の活動実態から2022

    • 著者名/発表者名
      玉置文弥
    • 雑誌名

      宗教と社会

      巻: 28 ページ: 1-15

    • 査読あり
  • [学会発表] 宗教の「現地化」と戦争ー第二次大本事件後における道院・世界紅卍字会の「日本化」2022

    • 著者名/発表者名
      玉置文弥
    • 学会等名
      「宗教と社会」学会 第30回学術大会個人発表
  • [学会発表] 近代日中宗教の「混淆」ー道院と大本教提携の「教義的根拠」2022

    • 著者名/発表者名
      玉置文弥
    • 学会等名
      日本宗教学会 第81回学術大会
  • [学会発表] 1920年代の日中関係と宗教運動ー大本教と道院・世界紅卍字会の連合運動2022

    • 著者名/発表者名
      玉置文弥
    • 学会等名
      アジア共創塾Jセミナー
    • 招待講演
  • [学会発表] 超国家主義と「民衆宗教」ー橋川文三の議論を中心に2022

    • 著者名/発表者名
      玉置文弥
    • 学会等名
      日本思想史研究会(京都)例会
    • 招待講演
  • [図書] 橋川文三:社会の矛盾を撃つ思想 いま日本を考える2022

    • 著者名/発表者名
      中島 岳志、杉田 俊介
    • 総ページ数
      304
    • 出版者
      河出書房新社
    • ISBN
      4309231144
  • [備考] リサーチマップ

    • URL

      https://researchmap.jp/b-tamaoki

  • [備考] 「宗教と社会」学会奨励賞

    • URL

      http://jasrs.org/projects/award.html

  • [備考] 日本宗教研究諸学会連合奨励賞

    • URL

      https://jfssr.jp/?page_id=537

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公開日: 2023-12-25  

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