タンパク質集合体は生体適合性と機能性から次世代超分子材料として期待されており,近年ではタンパク質工学や計算科学にもとづく集合構造の人工設計がさかんにおこなわれてきた.しかし,タンパク質の複雑な集合化反応を動的挙動にもとづき制御する指針は確立されていない.そこで本研究では,分子周りにおける,集合化を駆動する相互作用の配置を「集合力トポロジー」と定義し,その制御による,(1)二次元集積の設計,および(2)三次元複合化集積による液晶材料創出に挑戦した. 初年度はタンパク質分子針PNが有する異方形状に着目し,それらの自発的な二次元集合化の制御を試みた.PNの相互作用点を考慮したタンパク質を設計・合成し,高速原子間力顕微鏡観察を用いた二次元集合パターンの観察をおこなった.その結果,マイカ基板上特異的な四量体ユニットの形成を確認し,設計した二か所の相互作用点を使い分けたネットワーク状集合体を見出した.これにより,タンパク質のトポロジーを考慮したシンプルな設計による集合体設計が実現可能であることを示した. 最終年度である次年度は,セルロースナノ結晶(CNC)とタンパク質の複合化による構造色材料設計を目指した.ウシ血清アルブミンをはじめとする5種類のタンパク質をモデルとした実験系の確立を試みた.CNCとタンパク質とを混合した構造色フィルムの合成をおこない,光学顕微鏡とUV-Visスペクトル測定によって光学特性の変化を見出した.ここから,タンパク質―CNCハイブリッド系の利用により,自己集合材料の物性制御が実現可能であると提唱した. 以上より,異方形状分子の自己集合制御を実証し,タンパク質分子設計による生体由来ハイブリッド材料の創出への可能性を切り拓いた.
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