研究課題
葉緑体ATP合成酵素(CFoCF1)は、光合成電子伝達系により葉緑体のチラコイド膜内外に形成されるプロトンの電気化学的勾配を駆動力として用いてATPを合成する膜局在性のモータータンパク質である。この酵素は葉緑体内のチオレドキシン(Trx)による酸化還元制御の標的としても知られ、光合成が行われる明所でのみ活性化状態である還元型となる。すなわち、光合成反応におけるATPの生産は、光環境に応じて厳密に制御されている。本研究員は、CFoCF1の酸化還元制御機構の全貌の解明を目指し、すでにCFoCF1の還元を行うTrxのサブタイプを特定している(Biochim. Biophys. Acta 2020)。本研究では、暗所での酸化によるCFoCF1の不活性化機構を明らかにすることを目的とした。2022年度は、次の2点を明らかにした。(1)Trxと活性部位のアミノ酸配列が類似した酸化因子タンパク質(Trx-like protein)が、CFoCF1を酸化することをin vitro実験によって明らかにした。また、CFoCF1酸化が、チラコイド膜内外にプロトン勾配が形成されていない時に、より効率よく行われることを見出した(J. Biol. Chem. 2022)。(2)CFoCF1の酸化還元制御は、プロトン勾配の有無によって厳密に制御されていた。そこで、プロトン勾配を熱力学的な構成成分ごとに分けて、それぞれの寄与度の違いを調べた(論文執筆中)。以上一連の研究成果によって、植物の光合成におけるATP合成制御の全体像の理解を深めることができた。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Journal of Biological Chemistry
巻: 298 ページ: 102541~102541
10.1016/j.jbc.2022.102541
光合成研究
巻: 32 ページ: 131~137