研究課題/領域番号 |
22J13852
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
WANG XIAOHAN 東京工業大学, 工学院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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キーワード | 多孔質材料 / 共有結合性有機骨格 / 蓄熱エネルギー / 水蒸気吸着 / 結晶成長 |
研究実績の概要 |
共有結合性有機骨格(COF)とは,基本単位となる分子を縮合させて生成されたナノスケールの細孔をもつ結晶性有機固体材料である.その高い熱安定性と構造デザイン自由度から,多くの応用が提案されている,しかし,熱工学への応用が殆ど検討されていない.本研究では,COFの骨格への水蒸気吸着による発熱を用い,COFをホスト材とした新規な水蒸気吸着蓄熱材料の創出を追求している.そのため,COFの水蒸気吸着特性,および,その影響因子を明らかにすることが重要である. 本研究では,(1) 水蒸気吸着蓄熱に関するCOFの諸特性を明らかにし,COFの熱工学への応用を開拓すること,(2) COFのナノ細孔内部に水分子を吸着した複合系の吸着熱を明らかにした上,COFを用いた新しい水蒸気吸着蓄熱材料を創出すること,を目的としている. 本年度は,申請者が応募時研究計画書に記載した目的(1)と(2)について,研究を行って以下の成果を得た.目的(1)については,既報のCOFである「COF-300」を用い,その水蒸気吸着特性(水蒸気吸着等温線,水蒸気吸着エンタルピー)を測定により明らかにした.また,COF-300の水蒸気吸着によるCOFの骨格収縮に着目し,その収縮に消費される弾性エネルギーが水蒸気吸着エンタルピーへの寄与を分子動力学計算により解釈できた.本成果は国際および国内会議で口頭発表し,The 13th Asian Thermophysical Properties Conference (13th ATPC)においてはBest Presentation Awardを受賞した.目的(2)については,応募時に創製が成功した新規COFの結晶構造を明らかにした上で,水蒸気吸着特性の測定と評価を開始した.これらの結果に基づいて,次年度以降のCOF構造の設計指針として研究を展開することが可能となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では,当初の研究計画書に記載した内容の通り研究を展開した.代表的なCOFである「COF-300」の水蒸気吸着等温線,および吸着エンタルピーを測定により明らかにし,水蒸気吸着特性の計測と評価手法をおおむね確立した.得られた成果を学会で口頭発表を行った.また,申請者が創製した新規COFについて,結晶成長条件による構造異性体が生成できることを発見した.本年度中には,上述したCOF構造異性体の結晶構造解析と物性解明に進捗が見られ,COFの微視的な構造が水蒸気吸着特性への影響を検討することが可能となった.現在では,この新規COFの結晶構造解明に関する成果を基にし,国内学会の口頭発表を行った.それと並行して,学術論文の投稿を準備している.このように,全体としておおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
目的(1)について,本年度では,既報のCOF-300の水蒸気吸着等温線と吸着エンタルピーを明らかにしたが,使用したCOF試料の生成条件が限られている.今後は,COFの水蒸気吸着特性が結晶試料の物理的な性質(結晶形状,結晶サイズ等)への依存性をさらに探索する必要がある.そのため,今後は,COF-300の生成条件をさらに最適化し,生成されたCOF結晶の形状やサイズを制御した上で,水蒸気吸着特性との間にある相関を明らかにしてゆく.最終的に,その結果を基に学術論文誌への投稿を行う予定である. 目的(2)について,前述した新規COFの構造解明と物性評価が殆ど完了したため,まずはこれまでの結果を論文にまとめて,学術論文誌への投稿を進める.ただし,この新規COFはまだ十分な水蒸気吸着量を得られていないため,次年度以降,COFを生成する原料分子に付加される水蒸気吸着サイト,およびCOFの結晶構造に関する検討を行う.最終的に,COFの構造デザインから出発し,COFを用いた水蒸気吸着蓄熱材料系を創出する計画である.
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