共有結合性有機骨格(COF)とは,ナノスケールの周期構造をもつ多孔性材料であり,その高い安定性と高いデザイン自由度から多彩な応用が提案されている.しかし,これまでの先行研究は殆ど化学者によって行われ,COFの熱工学への応用に関する検討はされていない.本研究では,水分子がCOF骨格への吸着によって放出される吸着エンタルピーを利用し,COFをホスト材とした水蒸気吸着蓄熱材料系の創製に取り組んでいる.そのため,COFの水蒸気吸着特性,および,その特性における影響因子を明らかにすることが必要となる. 本研究では,(i) 水蒸気吸着による蓄熱系に関するCOFの諸特性を測定によって明らかにし,COFの熱工学への応用を開拓すること,および,(ii) COFの水蒸気吸着特性を明らかにした上,新しい水蒸気吸着蓄熱材を創出し,その設計指針を得ることを目的としている. 本年度は,目的(i)と(ii)について,研究を行って以下の成果を得た.目的(i)について,既報の3次元COFであるCOF-300を用い,その結晶成長における温度の影響を検討した.本成果は,The 17th International Heat Transfer Conferenceにおいて発表した.また,COF-300の水蒸気吸着特性における結晶サイズの影響を研究し,その知見を第60回日本伝熱シンポジウムにおいて報告した.目的(ii)について,応募時に創製が成功した一連の新規COFが互いに異なるトポロジーをもつ骨格異性体であることを明らかにし,各異性体の熱力学的な安定性を解明した.また,これらの新規COFは水をほとんど吸着しないことを明らかにし,その理由を議論して,今後のCOF構造の設計に対して指針を提供した.当該成果は,学術誌「Journal of the American Chemical Society」に発表された.
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