比較的安価で市場規模が大きい卑金属元素であるニッケルに着目し、従来の貴金属材料の代替となるような環境浄化型触媒の開発を行った。初めに、当研究グループが独自に開発した樹状高分子であるデンドリマーを用いた鋳型合成法により、4種類の核数を持つニッケルサブナノ粒子の合成を達成した。次に、これらをメタンのドライリフォーミング反応の触媒として応用し、ニッケルのナノ粒子やバルクとの性能比較を行った。結果として、本反応の昇温実験において、28核ニッケルサブナノ粒子が最も低い反応開始温度を示し、これが熱力学的平衡計算で得られた理論的限界値と一致するほどであることも判明した。実際に、この際の反応における活性化エネルギーを算出した結果、1 kcal/molを下回っていることが明らかとなり、従来触媒と比べて活性化障壁を格段に下げることに成功した。この成果から、触媒を原子レベルで適切にデザインすることで反応に最適なサイトが形成し、卑金属でさえ活性を最大限まで向上させることが可能であることが示された。 続いて、卑金属元素の拡張を目指し、ニッケル以外にもチタンから亜鉛までの計9種類の第四周期元素において、サブナノ粒子の合成を行った。結果的に、全ての元素間で錯形成挙動を統一することに成功し、これに伴い、統一条件における9種類の第四周期金属サブナノ粒子の合成に成功した。さらに、この条件を用いることで、多元素合金サブナノ粒子の合成も達成した。
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