本研究では、マウス生体の膵臓発生におけるモノアミントランスポーター2 (VMAT2) やモノアミンの制御機構を明らかにすることを目的とした。 単離した胎生12日目のマウス膵原基に対して薬理的にモノアミン合成を阻害することにより、モノアミンの中でも特にノルアドレナリン合成が膵発生において重要であることが分かった。そして、合成されたノルアドレナリンがモノアミンオキシダーゼによって分解され、その際に活性酸素種(ROS)が生成されていた。ROSを多く含む細胞はグルカゴン陽性の膵臓細胞であり、膵原基内に点在していた。その細胞を避けるように膵前駆細胞領域が拡大していた。ノルアドレナリン合成を阻害した際には、それらの膵前駆細胞領域の拡大は観察されなかった。また、VMAT2を阻害した場合でも同様であった。つまり、通常の膵臓発生ではVMAT2を介して輸送されたノルアドレナリンが分解されてROSが産生され、そのROSが膵前駆細胞領域の形成を制御していると推察された。グルカゴン発現細胞特異的にVMAT2を欠失したマウスの膵原基でも、同様の膵臓形態の変化やROS含有量の変化を確認できた。そのため、本研究で明らかにした現象はマウス生体でも保存されていると考えている。 今後は、ROSが膵臓形態を変化させるメカニズムについて検証していくことで膵臓の形態形成についてさらに理解を深めていく。これらの機構を解明して臓器発生を理解することは、将来的な再生医療の改善につながると考えている。
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