研究課題/領域番号 |
22J21252
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
脇村 尋 東京工業大学, 工学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | BVD法 / 低散逸誤差 / 緩和計算 |
研究実績の概要 |
令和4年度の研究成果は,主に次の2点である. ①PelantiとShyueの6方程式モデルにおける高解像度数値シミュレーション ②圧力・温度・ギブスエネルギーの緩和計算の理論的解析・改良
①BVD原理に基づく新しい数値解法を用いてPelantiとShyueの6方程式モデルを計算し,現在主流の計算手法と比べて数値散逸誤差を抑制できることが分かった.MUSCL-THINC-BVD法とadaptive THINC-BVD法では,キャビテーション等の相変化を伴う現象に対して,動的に生成される気液界面を高解像度で再現することができた.4次線形多項式関数と勾配パラメータを可変とするTHINC関数を候補補間関数に持つP4Tβv-BVD法では,滑らかな解と不連続解の双方の数値散逸誤差を抑制することができた.空間再構築を行う変数について,保存変数とプリミティブ変数の組み合わせにより,安定的な数値結果が得られた.これらの結果から,BVD法は気液二相流の長時間計算や圧縮性乱流のDNSに対して有効である可能性を示した.BVD法の実用性を検証するため,粘性応力や表面張力の高精度な計算手法の調査と非構造格子への適用に着手した.5方程式モデルや4方程式モデルといった他の数値モデルを計算し,6方程式モデルの数値結果との比較を開始した. ②気液界面の圧力・温度・ギブスエネルギーの条件を満たすように行われる緩和計算において,計算が途中で破綻する原因を特定し,緩和の計算方法を改良した.負の圧力値などの非物理的な値が発生する条件を理論的に解析し,計算する前に例外処理を行うことで,計算の安定性を確保した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究実施計画通りに進展している. 相変化を伴う圧縮性気液二相流における代表的なベンチマークテストをBVD原理に基づく空間再構築法で計算し,既存手法と比べて気液界面に代表される不連続解を低散逸で捕獲できることを確認した.様々な気液二相流の問題を解き,BVD法のロバスト性の検証を進めている.また,THINC関数の勾配パラメータを解の滑らかさによって決定する新しいBVD法を開発し,数値散逸誤差のさらなる抑制を達成している.計算コストと安定性を改善するため,より優れた勾配パラメータの計算方法の定式化に取り組んでいる. 空間再構築を行う物理変数の選択について,保存変数とプリミティブ変数の組み合わせから,数値振動誤差を小さく抑えることができる再構築変数のパターンを調査している.密度のみ保存変数を再構築し,その他は速度と圧力を再構築することで,安定的な計算結果を得ている.最適な再構築変数について,1次精度の簡潔な計算手法に絞り理論的解析を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
安定かつ高精度な空間再構築法の確立を目指し,BVD法の改良及び新しいハイブリッド型解法を開発する.4次以上の超高次線形多項式関数への拡張,THINC関数の勾配パラメータの優れた計算方法の開発,不連続解の新しい特定アルゴリズムの探求に取り組む. 計算手法の実用性を向上させるため,複雑な形状に対応可能な非構造格子で計算を行う.BVD法を構成する候補補間関数をそれぞれ非構造格子に拡張し,解の滑らかさに応じて適切な補間関数を選択できるBVDアルゴリズムを構築する. 実現象の計算として,ロケットエンジン内部の燃料噴射シミュレーションを行う.ピントル型噴射器を計算対象とし,液体燃料の噴霧・微粒化の様子を再現する.粘性応力と表面張力の高精度な計算方法について調査し実装する.細かい液滴および気液界面を散逸させず明瞭に捉える提案手法の実用性を示す.
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