素粒子を記述する標準模型や、重力を幾何学的に記述する一般相対性理論は、時空上の各点の近傍における局所的なダイナミクスを記述する物理理論である。この局所性を拡張した非局所的な場を考えることで、現在の物理理論の諸問題を解決するよう、理論の拡張を試みるのが非局所場理論の考え方である。本研究では、場の非局所性が宇宙の物理に与える影響について解析する。また、場の局所性と非局所性を観測から区別する手法を探求する。 位相欠陥は標準模型を超える理論に自発的対称性の破れが起きることで自然に生成されると考えられている。そこで、宇宙論的観測による非局所場理論の検証可能性を議論する第一歩として、非局所場が形成する位相欠陥の模型を構成し、局所場の模型との定性的な差異を明確にすることを目標の一つとしていた。この目標に対し、当該年度の研究では、位相欠陥の一つであるドメイン・ウォールのキンク解を非局所場の場合に拡張した。この解について解析的・数値的に解析を行なった結果、局所場の場合と比較してウォールの幅とウォールの単位面積あたりのエネルギーが小さくなることが示された。
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