研究課題/領域番号 |
22J22593
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
福原 優弥 東京工業大学, 理学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | 惑星形成 / ダスト成長 / 原始惑星系円盤 / ガス乱流 / 数値流体シミュレーション |
研究実績の概要 |
若い星周りには、惑星形成の現場となるガスと固体微粒子(ダスト)からなる原始惑星系円盤が存在する。惑星形成の初期段階は、ミクロンサイズのダストが合体成長し、キロメートルサイズの微惑星を形成することである。このダスト成長過程には、円盤内のガスの運動、特にガス乱流の影響を強く受けることが知られている。近年、ガス乱流を生成する物理機構として、円盤の放射冷却に起因する不安定性が注目されている。この不安定性が駆動する冷却駆動乱流は、ダスト成長に影響を与えうる。 本研究では、冷却駆動乱流の一つである鉛直シア不安定性(VSI)由来の乱流に着目する。これは、円盤の回転速度の鉛直勾配と円盤ガスの素早い冷却によって駆動する不安定性である。円盤の冷却効率は円盤ダストの空間分布やサイズ、量に依存しており、この乱流が駆動しうる領域は円盤の一部に限られることがわかっている。そこで令和4年度は、VSI駆動乱流に対する冷却率分布の依存性を系統的に調べた。公開流体コードであるAthena++を用いて、冷却率が空間的に変化する条件下で二次元大局流体数値シミュレーションを行った。実施に際しては国立天文台スーパーコンピュータXC50を使用した。その結果、乱流強度と冷却率分布の関係を解明し、VSIが乱流を駆動する正確な条件を明らかにした。この結果は、円盤ダストのサイズに応じて乱流強度が変化することを示唆し、円盤乱流下におけるダスト成長に影響を与えうる重要な結果である。以上の研究成果は複数の学会において発表済みであり、また本研究成果をまとめた論文は国際誌で出版済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度では、鉛直シア不安定性(VSI)由来の乱流に対する、冷却率の空間分布の依存性を調べた。円盤の冷却効率はダストのサイズや空間分布に依存することから、VSIが駆動する乱流もダストの影響を受けると考えられる。しかし、空間分布する冷却率のもとで、VSIがどの程度の強さの乱流を駆動するかは未解明であった。そこで本研究では、冷却率の空間分布を網羅的に設定し、軸対称円盤に対する二次元大局数値流体シミュレーションを実施した。その結果、VSI乱流の強度は冷却率の空間分布に依存していることが明らかになった。また、VSI乱流が強い乱流を駆動しない条件が正確にわかった。さらには、冷却率分布から、VSI乱流強度を推定する経験式を構築することができた。以上の研究成果は国内外の学会で発表し論文は国際誌において出版済みである。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の研究において、ダストサイズが決定する冷却率の空間分布とVSI駆動乱流の経験式を構築した。令和5年度では、この経験式をダスト合体成長の数値計算モデルに組み込むことで、円盤外側の低温領域における氷ダストの合体成長過程を調べる。それにより、冷却駆動乱流下でのダスト成長・微惑星形成過程を明らかにし、微惑星生成率の時空間分布を解明することを目指す。
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