研究課題/領域番号 |
22KJ1337
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
福原 優弥 東京工業大学, 理学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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キーワード | 惑星形成 / 原始惑星系円盤 / ガス乱流 / ダスト進化 / 数値流体シミュレーション |
研究実績の概要 |
惑星は、誕生したばかりの若い星周りに存在するガスとダストの円盤(原始惑星系円盤)で形成される。惑星形成の初期段階であるダスト成長・微惑星形成過程は、円盤のガス乱流の影響を強く受ける。近年、乱流駆動源として円盤の放射冷却に起因する流体力学的不安定性が注目されている。しかし、流体力学的不安定性由来の乱流(冷却駆動乱流)がダスト成長にどういう役割を果たすのか未解明である。 本研究では、冷却駆動乱流の一つである鉛直シア不安定性(VSI)が駆動する乱流に着目し、VSIとダストの共進化について調べた。円盤放射冷却の効率が良い状況において乱流を駆動するVSIは、ダストの大きさや空間分布によって駆動領域や強度が変化する。一方で、ダストはVSI乱流によって拡散しその空間分布を変化させることから、VSI乱流とダストは相互に影響を与えうる。そこで本研究では、VSI乱流によるダスト拡散と赤道面へのダスト沈殿が釣り合う平衡状態を探索する自己整合的なモデルを構築した。このモデルは、あるダスト空間分布のもとでのVSI乱流強度を数値流体計算に基づく経験公式を用いて推定し、仮定したダスト分布を維持できるか調べるものである。その結果、ダストサイズに応じてVSI乱流とダストの平衡状態が存在することがわかった。特にダストが大きい場合は、VSI乱流がダストの沈澱を止めることができず、赤道面へ暴走沈澱しうる。これは、原始惑星系円盤の観測によって示された強いダスト沈澱を説明できる可能性がある。 加えて本年度では、VSI乱流とダストの運動を同時に解くガス・ダスト二流体数値流体計算を行い、VSI乱流とダストの共進化を調べた。その結果、乱流とダスト分布の準定常状態が存在することがわかった。また、その準定常状態がダスト量及びダストサイズに依存することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
令和5年度では、原始惑星系円板における鉛直シア不安定性(VSI)由来の乱流とダストの相互作用に着目し、VSI乱流拡散とダスト沈殿の間に平衡状態が存在するかどうか系統的に調べた。その結果、ダストが小さい場合のみに平衡状態が実現し、ダストが成長し大きくなるとVSI乱流が駆動せずダストが暴走沈殿状態になることがわかった。以上の研究成果は複数の国内/国際の学会・研究会で発表しており、このことをまとめた学術論文が査読済み国際雑誌において出版予定である。 また、昨年度はドイツの研究機関に約4ヶ月滞在し、そこに所属する研究者と新たに国際共同研究を始めた。この研究ではダスト・ガス二流体数値シミュレーションを行うことで、VSI乱流とダストの共進化過程を明らかにすることを目指す。その結果、VSI乱流が駆動するかどうかはダストの大きさと量に依存することがわかった。この研究の初期成果は既に国際学会で発表済みである。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は昨年度の研究内容をさらに発展させる。具体的には、昨年度行ったVSI乱流のダスト・ガス二流体数値流体シミュレーションについて、更なる計算の実施及び解析を進め、VSI乱流中でのダストの振る舞いを系統的に明らかにする。この結果をまとめ、査読論文として投稿することを目指す。また、ダスト量とダストの大きさによってVSI乱流の駆動領域と強度が変化する状況のもとでの円盤・ダスト進化の数値計算を行う予定である。この研究では、VSIとダストが共進化する中でのダスト成長過程を明らかにし、微惑星形成過程を解明することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和5年度では、若手研究者海外挑戦プログラムに採択され、約4ヶ月ドイツに滞在した。この期間における学会の参加費や滞在費はこのプログラムから支給されたため、海外訪問や国際学会の参加に充当する予定だった予算を繰り越した。 この繰越金は、海外訪問および国際学会の旅費等に充当する予定である。また研究を推進させるための計算機や周辺機器の購入などにも充てる予定である。
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