研究課題/領域番号 |
22J22725
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
安納 爽響 東京工業大学, 情報理工学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | 群衆混雑 / 継続時間 / 精緻化 / ライフサイクル |
研究実績の概要 |
本研究は群衆混雑の早期予報において,予報可能地域の空間的カバレッジを広範化させることに着目し,(1)予報の地点拡大化・精緻化,(2)予報地域の広範囲化の実現が目的である.(2)予報の広範囲化は,(1)で実現される多地点での精緻な予報が前提になることから,本年度は当初の計画通り(1)の実現を目指して,混雑の要因となりうるイベントの開催情報など外部情報の収集を行い,位置履歴情報との統合を行うことで混雑予報の可能地点の拡大化と精緻化を図った.
混雑を示すための外部情報としては,ユーザの将来の移動予定を表す乗換検索案内アプリの検索履歴と,混雑を誘発すると考えられるイベントが,いつどこで,どれくらいの時間長で発生するのかを示す,イベント開催時間情報を収集した.これらを用いて群衆混雑予報に適用した結果,混雑予報可能地点の拡大化に効果がある一方,精緻化という観点で困難が発生することがわかった.具体的には,イベント開催時刻と群衆混雑の発生時刻がいつも一致するとは限らず,群衆がイベント会場に来訪し留まることにより発生する「混雑の継続」が捉えられないことである.
この課題の解消のために,混雑の発生から終了までを「ライフサイクル」と捉え,それを幾つかのフェーズに分割し,各フェーズの特性を明示的に学習する手法を考案した.具体的には,混雑を生起フェーズ(人々が集まり 始める段階),継続フェーズ(人々が混雑エリアに滞在し,混雑状態が継続する段 階),終了フェーズ(イベントなどの終了に伴い人々が帰っていく段階)に分割し, 各フェーズの時間長や人口増加量を明示的に学習することでモデルである.本手法を実装し,事前実験として人工データを用いた性能評価実験を行った.その結果,単純に外部情報を統合した場合と比較して,混雑の継続時間やその間の活動人口の推移をより正確に捉えられることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記す通り,2022年度は当該年度で当初計画していた通り,外部情報の統合による「(1)混雑の予報地点拡大化・精緻化」の実現を目指した.そこで新たに直面した課題である,「混雑の継続時間の未捕捉による混雑予報の不精緻性」という話題に対して,混雑が持つライフサイクル性に着目し,その各フェーズの特性を明示的に学習することで,不精緻性を解消するための手法を構築した.また,上記の手法を実イベントデータに適用し,混雑の継続時間を捕捉したことにより予報性能が向上したことを確認した.この研究成果は,2023年5月24-26日に開催予定である情報処理学会第78回UBI研究会にて報告予定である.
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今後の研究の推進方策 |
群衆混雑の早期予報における(1)予報の地点拡大化・精緻化,(2)予報地域の広範囲化という課題の解決に向けて,前年度の「混雑の継続時間を捉える手法の構築」を受けて,本年度以降,(1)の課題における予報のさらなる精緻化のため,混雑を誘発するイベントの希少性に着目したモデリング手法の開発を行う.混雑を誘発するイベントの開催は非常に稀であり,データセット内に記録される混雑パターンは希少なものとなる.その際に発生する,学習データ内の混雑パターンの異常性・希少性に起因した予測モデルのバイアス増大による性能劣化を抑制するため,密度比推定の技術を活用した手法の定式化し,プログラムの実装を行う. また,(2)予報地域の広範囲化の課題解消に向けて,2022-2023年度に構築した情報統合技術を発展させ,地域の近接性や人の流動などを考慮可能なグラフに基づく準教師あり学習やマルチタスク学習を用いて定式化し,情報統合が困難地域においても混雑を精緻に予報可能な手法の構築を行う.また,収集された実データを用いて評価・検証を繰り返し,手法の改善を図る.
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