研究課題/領域番号 |
22J23423
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
小野 遼真 東京工業大学, 物質理工学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | 使用済み核燃料再処理 / 沈殿剤開発 / 沈殿法 / プルトニウム / 硝酸 |
研究実績の概要 |
実際にPuを用いた沈殿試験を2種類の沈殿剤(架橋N-ピロリドン誘導体)を用いて行った。結果として、Pu(IV)に対して良好な沈殿能を示すことが明らかとなった。具体的には使用済み核燃料溶解液中に119 mMのPu(IV)がある場合(融解金属高速増殖炉の使用済み核燃料での試算値)、99%以上を沈殿回収できる試算となった。また、他のM(IV) (M = Ce, Th, U, Np)と比較すると、実験条件によってはCe(IV)のみ全く異なる沈殿物を生じることが明らかとなった。一方でPu(IV)と他のAn(IV)は沈殿率こそ異なるものの、同じ結晶構造で沈殿を生じることが分かった。これを踏まえ、今後の沈殿剤開発においては、Pu(IV)の模擬としてのM(IV)との反応性は模擬できていない部分が多分にあることを認識して注意深く検討する必要があると考える。 また、沈殿物中に存在する極めて強い水素結合について単結晶中性子構造解析(SCND)を用いて詳細に検討した。当該水素結合は(+)-CAHB((+)-Charge Assisted Hydrogen Bonding)であることが単結晶X線構造解析によって示唆されていたものの、その水素にはほとんど電荷密度が存在しないために原理的に確認ができていなかった。これに対し本研究ではSCNDによって水素の原子座標を決定するに至った。これにより、当該沈殿物の構造的な理解がより深まった。 以上より、実用に耐えうると期待される沈殿剤が確認された。今後はこれまでに得られた知見を基に沈殿剤の構造の内、沈殿能に大きくかかわる因子の把握を目的として研究を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
沈殿剤によるAn(IV)沈殿の沈殿機構の解明については、沈殿物の構造的な比較から順調に理解が深まっていると思われる。 種々の架橋部位を持つ架橋N-ピロリドン誘導体と4価アクチニド(An(IV))を硝酸水溶液中で混合したところ、2種の沈殿剤を除いて沈殿物が得られなかった。これにより当初実験計画にて予測していたよりもAn(IV)を沈殿可能な沈殿剤の種類が少ないことが明らかとなり、沈殿剤の架橋構造と沈殿能の系統的な比較が困難となった。一方で、架橋部位の構造と沈殿能の間に明瞭な関係性があることもこの結果から分かる。沈殿物が得られない沈殿剤と得られる沈殿剤の差異を多面的に評価することで、実験計画で目的とする沈殿剤分子設計の指針の獲得も達成可能と考える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに2種の架橋N-ピロリドン沈殿剤(DHNRP)がPu(IV)を含む4価アクチニド(An(IV))を硝酸溶液中で沈殿可能なことが分かった。そこで、An(IV))を沈殿可能なDHNRPの構造に似たDHNRPを幾種か合成および沈殿能を評価し、沈殿能とDHNRPの構造の間の相関関係を検討する。 また、An(IV)と沈殿を生じるものの沈殿能が低く、沈殿物の結晶性が低いDHNRPも確認されている。この沈殿物の結晶および分子構造を理解することは沈殿能の低くなる要因の解明につながると考えられる。そこで、より良質な結晶の調製を沈殿条件を最適化することで達成し、単結晶X線構造解析を目指す。これが不可能な場合、結晶性沈殿ができる限り等方的に生じる条件を探査し、Rietveld解析による結晶構造の決定を目指す。
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