研究課題/領域番号 |
22KJ1347
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
小野 遼真 東京工業大学, 物質理工学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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キーワード | 使用済み核燃料再処理 / 沈殿法 / ウラン / プルトニウム |
研究実績の概要 |
本年度では、新たな4価/6価核燃料物質同時沈殿剤の開発を行った。昨年度までにシクロヘキサンのtrans-1,2位およびtarns-1,4位に2-ピロリドンを有する架橋ピロリドン誘導体(L、12Cy、14Cy)がU(VI)およびPu(IV)と硝酸水溶液中で難溶性結晶を与えることを明らかにしてきた。他のLについてPu(IV)の模擬としての4価金属イオン(M(IV))に対する沈殿形成能を調べたところ、M(IV)と結晶性沈殿を形成するためには、回転可能な-CH2-を持たない剛直な構造をもつ必要があることが示唆された。そこで、剛直な架橋構造としてアダマンタン骨格を採用し、アダマンタンの1,3位に2-ピロリドンを有する13Adを新たに合成した。 13AdのPu(IV)に対する沈殿能を調べるために、3 M硝酸中でPu(IV)と13Adを混合した。結果として、Pu(IV)ヘキサニトラト錯体と2つのH+で2つの13Adが架橋された2量体のイオン対として沈殿することが明らかとなった。この化合物の3 M硝酸への溶解度は2.5 mMであった。12Cyと14Cyの場合、溶解度はそれぞれ<1 mMおよび4 mMであるため、13AdはLの中でPu(IV)に対して2番目に良い沈殿能を示すといえる。 U(VI)に対する沈殿能を調べるために3 M硝酸中でU(VI)と13Adを混合したところ、他のLの場合と同様に硝酸ウラニル配位高分子の形で結晶性沈殿を与えた。この化合物の3 M硝酸中への溶解度は3.52 mMであった。12Cyと14Cyの場合、溶解度はそれぞれ14.8 mMおよび2.49 mMであるため、13Adは4価/6価核燃料物質同時沈殿剤の中でU(VI)に対して2番目に良い沈殿能を示すといえる。以上より、13Adが4価/6価核燃料物質同時沈殿剤として機能し得ることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、架橋ピロリドン誘導体(DHNRP)によるCe(IV)、Th(IV)、U(IV)およびPu(IV)からなる4 価fブロック金属イオン(M(IV))とU(VI)の選択的かつ高効率な同時沈殿回収の原理解明およびDHNRPの分子設計指針を獲得することである。研究実績の概要に示したように、M(IV)を沈殿可能なDHNRPと沈殿しないDHNRPの比較により、架橋構造の剛直性が必要であることを見出した。この分子設計指針に基づいて新たに架橋部位にアダマンタン骨格を持つ沈殿剤、13Adを開発し、Pu(IV)を含むM(IV)およびU(VI)の沈殿能を確認した。このことから、分子設計指針の獲得という観点から成果が得られたものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度では、以下の二点について研究する予定である。第一に、DHNRPの架橋構造をわずかに変え、それぞれのM(IV)沈殿能を比較することで、沈殿剤の分子設計のより詳細な理解につなげる。特にPu(IV)への沈殿能の高いシクロヘキサンの1,2-位に2-ピロリドンを有する架橋ピロリドン誘導体(DHNRP、12Cy)に注目し、より高い沈殿能のために必要な分子設計指針を得ることを目的とする。 第二に、実際の再処理への適用を考え、他の金属イオンと核燃料物質の分離能を調べる。他の金属イオンと核燃料物質の分離は使用済み核燃料再処理の主たる目的であるため、重要な検討と考える。さらに、分離能を詳しく調べることで核燃料物質に選択的となる原理解明にもつながるものと期待している。
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