研究課題/領域番号 |
20J40140
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
小原 優貴 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2020-10-12 – 2024-03-31
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キーワード | 就学前教育 / インド / 教員養成 / 学習観 / 構成主義 |
研究実績の概要 |
①昨年度に引き続き、インドの就学前教育と教員養成に関する政策・制度の分析、調査報告書、学術論文等のレビューを進め、異なる運営主体の就学前教育機関の教育と教員の実態について理解を深めた。インドでは低額私立の就学前教育プログラムが急速に拡大しており、農村地域においてもこれらのプログラムの参加率が5歳児(小学校入学直前)で最も高いことがわかった(ASER Centre 2019)。しかしながらこれらのプログラムでは、政府が導入を目指す構成主義の学習観とは相反する教師中心の暗記学習が頻繁に行われていること、加えて、多くの教員が無資格の大卒者であることを確認した(ASER Centre 2017ほか)。一方、既存の公立小学校に設置された就学前クラスは、就学前教育あるいは初等教育教員に必要な資格保有者を多く雇用しているものの、低い普及率が課題となっていることを確認した。
②社会問題の解決に取り組む非営利組織、FSGが、インドの低額私立の就学前教育プログラムの暗記学習を活動型の学習(Activity-based Learning, ABL)に転換するために、2015年より開始したPIPE(Program to Improve Private Early Education)に着目し、その概要と成果および課題を整理した。そして、低額私立学校の多くが、財政的な制約に加えて、「暗記教育=質の高い教育」という認識からPIPEへの参加に消極的であること、PIPEへの参加に関心を示した学校においても、経験や支援不足からABLの導入に困難を感じる教員が少なからず存在していることを確認した。加えて、PIPEは低額私立学校を「収益性があり、市場規模が大きい業界」とアピールして教育企業の協力を得ているが、これらの学校の多くは零細資本であることから、PIPEの持続可能性の検証の必要性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
インドの現地関係者にオンラインで調査を行ったが、十分な情報を得ることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
構成主義の学習観がインドの就学前教育の現場にどのように導入され、各アクターはそれをどのように捉え、対応しているのかを把握するために、現地に赴き、調査対象者に十分な調査を行う。具体的には、以下を進める。 (1)就学前教育提供機関、教員養成機関の教員を対象とした質問紙調査及び聞き取り調査を、現地研究者の協力を得て、対面で実施する。 (2)(1)の結果の分析・解釈を進める。 (3)(1)(2)では確認できなかった点について情報を得るため、(1)の調査対象者の中から適切な対象者を選び、オンラインもしくは対面でのインタビューを追加で実施する。 (4)(3)の結果の分析・解釈を進め、Comparative Education Society of Asiaの13th Biennial Conference(2023 年11月開催予定)等で発表する。
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