令和5年度は、エレオノール・エスカリエ(1827-1888)の自画像作品(1863年サロン(官展)出品作)に関する史資料について、アルシーヴ・ナショナルやフランス国立図書館において調査を進め、2024年の学会発表に向け、考察をまとめた。 また、昨年に引き続き、エスカリエについては、これまで彼女の陶磁器に偏って研究が進められてきた、という問題意識に立ち、従前等閑に付されてきた彼女の陶磁器以外の作品、デッサン等を包括的に把握するため、彼女がその下絵について国家注文を受けた、リュクサンブール宮が所蔵するタペストリー1点(下絵は1880年サロン出品作)や、セーヴル陶磁制作所が所蔵する、これまで未公開のデッサン、装飾パネル等、それぞれ約60点、10点ほどについて調査を行った。特にセーヴル製作所の調査では、同製作所の協力により、これまで所蔵が公開されていなかった作品等にも接することができ、またその内幾つかのデッサンについては、彼女の画家としての力量を把握する手掛かりとなっており、また実際に現存する作品の下絵であることが判明したことから、有意義な調査となった。 加えて、彼女が当時の女子教育について有していた考え、その先進性を考察するため、アルシーヴ・ナショナルやフランス国立図書館において、その書簡や、19世紀後半に同国で出版された定期刊行物や重要二次文献を調査した。さらに、彼女の人物交友関係を示す、通常公開対象となっていない、これまでほとんど検討されてこなかった書簡について、アルシーヴ・ナショナルにおいて調査し、これらの考察、そのまとめを進めた。
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