研究課題/領域番号 |
22KJ1356
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
藤谷 未央 お茶の水女子大学, 人間文化創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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キーワード | 1989年版幼稚園教育要領 / 文部省 / 四六答申 / 幼稚園教育課 / 幼稚園課 / 「幼稚園教育要領に関する調査研究協力者会議」 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本の幼児教育が小学校教育に対する独自性を獲得する画期であった1989年版幼稚園教育要領の形成過程を、戦後日本における幼児教育認識の変遷と幼児教育政策の展開過程に着目し歴史的に明らかにすることである。本年度実施した研究の概要は以下の通りである。 第一に、1971年に「今後における学校教育の総合的な拡充整備のための基本的施策について(答申)」(通称「四六答申」)を提出した中央教育審議会における幼児教育に関する審議過程を明らかにするため、国立公文書館デジタルアーカイブにて公開されている一次資料の分析を進めた。分析結果については教育史学会第67回大会にて報告した。発表においては、四六答申で幼児教育の拡充が打ち出されたプロセスについて、当時の学制改革論との関係で5歳児の教育の在り方について活発な議論が展開されていたこと、また方針の決定には文部官僚の介入が関係したことなどを明らかにした。その後、発表した内容と当日の議論をもとに研究論文をまとめ、学会誌に投稿した。 第二に、四六答申の作成過程をより詳細に明らかにするため、答申作成にかかわった個人の文書を分析した。前年度広島大学文書館にて収集した「森戸辰男関係文書」の分析のほか、国立国会図書館憲政資料室に所蔵されている「有光次郎関係文書」や、国立教育政策研究所教育図書館に所蔵されている個人文書の調査・収集を進めた。 第三に、1980年代における幼児教育関係者の幼児教育認識を明らかにするため、昨年度に引き続き「幼稚園教育要領に関する調査研究協力者会議」に着目し、審議経過やその検討の特徴について分析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り国内学会での発表と論文投稿を行った。論文の採択には至らなかったため、査読結果をもとに改めて検討を加え、別の学会誌に投稿する準備を進めた。この過程では分析をより発展させることができた。 そして国立公文書館デジタルアーカイブでは公開されていない個人文書を調査・分析する過程においては、四六答申の作成過程や、四六答申公表直後における幼稚園教育課程の検討について、今後の研究につながる新たな視点を得た。 さらに本年度実施した四六答申作成過程における中央教育審議会の議論の分析と、これまでに実施してきた研究の結果をあわせることで、1964年の幼稚園教育要領改定以降1989年の幼稚園教育要領改訂に至るまでの25年の間に、審議会における政策立案者が幼児教育の在り方をいかに議論してきたか通時的に把握し、その変遷を整理することができた。こうしたことから、今年度も研究を進展させることができたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度四六答申で幼児教育拡充が目指された経緯を明らかにする研究に取り組んだことによって、新たに、1960年代以降文部省内でなされた幼稚園教育課程に関する検討状況を明らかにする必要があると考えられた。そのため、次年度はこの点を補う研究に取り組む。まずは改めて先行研究の検討を行う。そして、1964年の幼稚園教育要領改定以降、特に1972年文部省初等中等教育局内に幼稚園教育課が新設されてから1989年の幼稚園教育要領改訂に至るまでの間に、文部省が幼稚園の教育課程についてどのように検討を進めてきたのか、主に文部省発行誌や文部省発行書に基づいて明らかにする。また、1984年に文部省に設置され、1989年版幼稚園教育要領の基本方針を形成したとされる「幼稚園教育要領に関する調査研究協力者会議」においてなされた議論やその特徴について引き続き検討する。 分析結果は幼児教育史学会などの国内学会において報告し、研究論文としてまとめていく。また研究成果の一部について、再来年度の国際学会で発表できるようエントリーを行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
教育史学会第67回大会で報告するための国内旅費を計上していたが、大会がオンライン開催になったため使用しなかった。この費用は次年度の博士論文執筆に必要な書籍購入・資料複写にあてる。また国際学会エントリーのための英文校閲費を計上していたが、エントリー手続きを翌年度4月に行うことにしたため、本年度には使用しなかった。
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