研究課題/領域番号 |
21J22442
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
寺西 郁 電気通信大学, 情報理工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
|
キーワード | 制御理論 / 暗号理論 / 計算量的安全性 / 暗号化制御 / 制御システムセキュリティ / サイバーフィジカルシステム |
研究実績の概要 |
1. 計算量的安全性に基づいた制御システムの新たなセキュリティ指標の定義:本研究では,暗号理論における計算量的安全性を制御理論に導入することで,秘匿性を考慮した制御理論の構築を目的としている.本年度は,準同型暗号を用いた暗号化制御システムを対象に,攻撃者がシステム同定によって制御システムの情報を不正に開示する状況において,所望の同定精度を得るために要する入出力データ数と,そのデータの暗号文の解読に要する計算量を用いてセキュリティ指標を定義した. 2. 制御システムのセキュリティと入出力データ数・計算量の解析:新たに定義したセキュリティ指標の下で,制御システムのセキュリティと計算量の関係を解析した.まず,セキュリティ指標とシステム同定に要する入出力データ数を解析した結果,所望の同定精度を得るために要する入出力データ数は,対象の制御システムの重み付き可制御性グラミアンに依存して変化することが明らかになった.次に,計算量について解析した結果,暗号鍵が更新可能な暗号方式を用いる場合,通常の暗号方式と比べて暗号文の解読に要する計算量が増加することが明らかになった. 3. 制御システムのセキュリティと制御性能の解析:新たに定義したセキュリティ指標の下で,制御システムのセキュリティと制御性能の関係を解析した.前述の可制御性グラミアンはシステムの安定度と関係があり,このことから,制御システムの安定度が高いほどセキュリティ強度も強いことが明らかになった. 4. 最適な鍵長と制御器の設計:得られた解析結果を用いて,暗号化制御システムのセキュリティを一定期間保証する最適な鍵長と制御器の設計法を導出した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の研究課題において,対象の制御システムのクラスは限られているものの,計算量的安全性に基づいて新たなセキュリティ指標を定義し,制御システムのセキュリティと入出力データ数・計算量・制御性能の解析を行い,最適な鍵長と制御器の設計法を導出した.また,これらの妥当性は数値シミュレーションにより確認を行なっており,研究成果は英文誌に採択されている.現在は,引き続き,本年度に得られた研究成果の一般化に取り組んでいる状況である.
|
今後の研究の推進方策 |
1. 研究成果の一般化:制御対象,制御器,攻撃手法のクラスを一般化することで,本年度に得られた研究成果をより広いクラスの制御システムへ適用可能にする. 2. 証明可能安全性の適用:証明可能安全性に基づいて制御システムのセキュリティを定義することで,暗号理論の観点からもセキュリティの解析を行えるようにする.
|