研究課題/領域番号 |
21J22873
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
田中 叡 電気通信大学, 情報理工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
|
キーワード | 運動錯覚 / 腱振動刺激 |
研究実績の概要 |
初年度における当初の研究計画では、研究目的における(1)システムの多自由度への拡張、(2)自然な運動感覚を実現する操作・提示手法の確立、(3)多感覚の組み合わせによる強力・自然な運動錯覚の提示、という3つのアプローチに対して、(1)上腕の前後運動への対応、(2)振動刺激のパラメータを決定するアルゴリズムの改良、(3)皮膚感覚を組み合わせえた運動錯覚提示、という3つの研究を行う予定であった。 しかし実際には、前年度までの研究の遅れなどから、(2)振動刺激パラメータを決定するアルゴリズムの改良、という項目に重点を置いた。 具体的には、信号処理の考え方を応用し、振動刺激の周波数と知覚される運動錯覚の関係を調査する研究を行った。これは振動周波数が時間変化する振動刺激を提示し、その際に被験者が運動錯覚として知覚した関節の角度を記録し、両者の関係を信号処理における伝達関数として記述するものである。 その際、運動錯覚に関する先行研究で一般的に行われているような「被験者の片腕に運動錯覚を提示し、もう片方の腕で感じた運動を再現してもらう」という実験方法ではなく、「片腕には運動錯覚、もう片方の腕には物理的な運動を提示し、両者の感覚が一致するように運動のパラメータを調整してもらう」という実験手法を行うことで、錯覚を感じてから再現するまでの遅延を回避する手法を提案した。この試みの成果は国内学会(ロボティクス・メカトロニクス講演会2022)で発表予定である。 また、副次的な研究として、大型の電磁石により磁場を発生させ、ユーザの把持する磁石を駆動することによる非接触力覚提示デバイスに関する研究を行った。この成果は2021年9月の国内学会(第26回日本バーチャルリアリティ学会大会)で発表された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、(1)システムを肘の運動だけでなく前腕を前後に動かす運動に対応させ、2自由度に拡張する、(2)VR空間内の運動から振動刺激のパラメータを求めるアルゴリズムを改良し、より自然な運動錯覚を実現する、(3)振動刺激以外に皮膚感覚も組み合わせることで運動錯覚を強化する、という3つのタスクを行う予定であった。 しかし実際に行ったのは(2)のみであり、その進捗に関しても運動錯覚の自然さを向上させる段階には達しておらず、アルゴリズムの改良に必要なデータ収集の途中となっている。 また当初は成果をまとめて論文誌に投稿することを予定していたが、実際には国内学会への予稿投稿にとどまっている。 これらの理由から、進捗状況は予定よりやや遅れていると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後も、研究計画で挙げた(1)システムの多自由度化、(2)操作・感覚提示アルゴリズムの確立、(3)多感覚の組み合わせ、という3つのアプローチは維持する。 しかし、複数のアプローチに同時に取り組むことは止め、ある程度の結果が出るまでは特定のアプローチを集中的に検討するものとする。 具体的な計画としては、まず現在行っている「振動と運動錯覚の関係を伝達関数として計測する」というを試みを進め、その成果をVRシステムに組み込むことで、「(2)操作・感覚提示アルゴリズムの確立」を目指す。その後は「(1)システムの多自由度化」および「(3)多感覚の組み合わせ」に取り組む。
|