研究実績の概要 |
超高齢社会を迎えた我が国において, サルコペニア(加齢性筋減弱症), フレイル(虚弱), ロコモティブシンドローム(運動器症候群), 転倒骨折など運動機能低下が関連する要介護・要支援者は200万人(2017年)を越え, 要介護・要支援者全体のおよそ30%を占めている. 予防の余地が残されている運動機能の低下への対応は喫緊の健康課題であり, その根幹をなす骨格筋量や機能を維持することが不可欠である. 我々はこれまでの研究により,骨格筋量を維持するには, 筋内のタンパク質の合成・分解のバランスを保つことが重要であり, 特に細胞内タンパク質の動的な分解システムであるプロテアソームと呼ばれる酵素複合体とその分解過程の下流にあたるペプチド分解酵素であるアミノペプチダーゼが骨格筋の維持に不可欠であることを明らかにしてきた. そこで本年では, アミノペプチダーゼによる筋量制御メカニズムの解明を目指し, ロイシンアミノペプチダーゼLAP3に着目した研究に取り組んだ. LAP3遺伝子欠損マウスを作出し, 骨格・骨格筋量, 臓器の重量といった表現系解析を実施した. その結果, LAP3KOマウスは個体が小さく, 特に骨格筋量が減少することがわかった. その一方で, 他の臓器については重量の変化が見られなかったことから, LAP3は筋特異的な制御分子として機能する可能性が示唆された. 今後はLAP3による筋量制御の分子機構の解明を中心に研究に取り組む予定である.
|