研究実績の概要 |
骨格筋量を維持するには, 筋内のタンパク質の合成・分解のバランスを保つことが重要であり, タン パク質の合成量が分解量を下回らなければ, 筋量は維持されると考えられてきた. 細胞内タンパク質の 動的な分解システムは, プロテアソームと呼ばれる酵素複合体によって司られており, その機能バラン スは細胞内タンパク質の多寡に影響する. そこで我々はプロテアソーム機能を抑制することで骨格筋量を増加できないか検討したが, 予想に反し, 骨格筋に おけるプロテアソーム阻害は筋肥大ではなく重篤な筋量低下を引き起こすことが分かった. この成果は, プロテアソームによる適切なタンパク質分解機構が骨格筋量の維持に不可欠あることを示唆しているが, その詳細な機序については不明である. そこで本研究ではプロテアソームによるタンパク質分解により産生されるオリゴペプチドを分解処理するペプチド分解酵素アミノペプチダーゼに着目した. 様々な予備検討からロイシンアミノペプチダーゼが筋分化に寄与することが明らかになったため, ロイシンアミノペプチダーゼ遺伝子欠損マウスの作出を行い, 解析に取り組んだ. その結果, わずかに個体が小さいにもかかわらず内臓器の重量に変化はなく, 筋量においてのみ減少傾向であった. さらに生化学的な評価を実施したところ, タンパク質分解機構に影響を及ぼす可能性が明らかとなった. 以上のことから, ロイシンアミノペプチダーゼは骨格筋のタンパク質代謝制御に関与することで筋量調節に寄与するのではないかと考えている. 今後更なる解析に取り組んでいく.
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