研究課題
本研究の目的は,一般的な計算モデル(プレーンモデル)において乱数を定数長に限定した状態で計算可能な関数クラスや達成可能な安全性を明らかにすることである.そのために,強い物理的仮定に基づく計算モデル(スタックモデル)における乱数を使用しない秘密計算プロトコルを,定数長の乱数を追加しつつ,プレーンモデルにおける秘密計算プロトコルに変換することを目指している.そこで,本年度は,物理的仮定と乱数との関係を解明し,どのように乱数を追加すれば変換が可能になるかを明らかにすることを目的として,乱数を使用しない代わりに物理的仮定に基づく秘密計算プロトコルである,カードを用いるプロトコル(カードベース暗号)とスタックモデルにおけるプロトコル(private PEZプロトコル)の効率化に関して研究を行った.カードベース暗号に関して,効率の指標であるカード操作回数や通信回数が入力数に関して線形なプロトコルの中で,カード枚数がn枚未満で実行可能な初めてのn入力多数決プロトコルを提案した.この成果は査読付き国際論文誌IEICE Transactions on Fundamentalsに採録されている.また,秘匿和集合プロトコルをカードベース暗号で初めて提案した.この成果は国内会議コンピュータセキュリティシンポジウム2022(CSS2022)で発表し,CSS2022優秀論文賞を受賞した.さらに,秘匿置換と呼ばれる操作を用いるカードベース暗号で,トランプを用いて実行可能でカード枚数が効率的なプロトコルを提案した.この成果は国内会議2023年暗号と情報セキュリティシンポジウム(SCIS2023)で発表した.また,private PEZプロトコルに関して,m値n入力関数を計算するプロトコルの効率の漸近評価を行い,国内会議2023年暗号と情報セキュリティシンポジウム(SCIS2023)で発表した.
2: おおむね順調に進展している
スタックモデルにおける乱数を使用しない秘密計算プロトコルを,定数長の乱数を追加しつつ,プレーンモデルにおける秘密計算プロトコルに変換するために,乱数を使用しない代わりに物理的仮定に基づく秘密計算プロトコルである,カードベース暗号とprivate PEZプロトコルの効率化に関して研究を行った.具体的には,カードベース暗号では多数決プロトコルや秘匿和集合プロトコルを提案し,private PEZプロトコルではm値n入力関数を計算するプロトコルの効率の評価を行った.これらのプロトコルの研究を通じて,物理的仮定が果たす役割について理解を進めることができ,プレーンモデルにおけるプロトコルへの変換を行うにあたっての知見を得ることができたため,おおむね順調に進展していると判断した.
本年度の成果を踏まえつつ,当初の計画に従い,スタックモデルにおけるプロトコルをプレーンモデルにおけるプロトコルへの変換を目指す.また,本年度に得られた成果の完成度を上げ,査読付き国際会議・学術雑誌に投稿する.
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件)
電子情報通信学会論文誌 A
巻: J106-A(8) ページ: -
10.14923/transfunj.2022JAI0002
IEICE Transactions on Fundamentals of Electronics, Communications and Computer Sciences
巻: E106-A(3) ページ: 315,324
10.1587/transfun.2022cip0021