本研究はマットレスセンサで専門医師なしに睡眠段階を推定する手法の実用化に向け,(1)一夜の各睡眠段階の割合不均衡を考慮した推定法(2)突発的もしくは数分以上にわたり特徴が出現する睡眠段階にロバストな推定法,(3)年齢やその日の体調などによる個人(内)差を考慮した推定法,の3つのサブテーマに取り組んだ. 本年度は3つ目のサブテーマに取り組み,睡眠中の約90分周期のウルトラディアンリズム(UR)に着目し,睡眠中の体動発生パターンからURを導出し,そのURに近づくように機械学習が出力する各睡眠段階の推定確率を補正することで推定精度の向上を図った.これにより,一部の被験者におけるNR12睡眠やREM睡眠の過剰判定が抑えられ,一晩の睡眠構造の把握をしやすくなった.さらに,URの推定精度が向上すると睡眠段階の平均推定精度が76%まで向上した.この成果は国際会議IEEE EMBCにて発表した.また,URに基づいて推定結果を補正する際に,一定の条件を設定し,補正していたが,個人によって条件が異なることから,人工知能の学習法の1つである強化学習から着想を得て,URに近づくように各睡眠段階の推定確率を1度補正するだけではなく,一定期間および条件のもと複数回補正することで,大きく外れた推定確率も滑らかに補正し,更なる推定精度の向上を図った.この成果は英文学術誌JACIIIに掲載された. 研究期間を通じて取り組んだ3つのサブテーマの手法について,(1)は一晩の睡眠で割合が少ないWAKE,NR3睡眠を積極的に判定する特性があり,(2)ではREM睡眠を,(3)ではREM睡眠,NR3睡眠を積極的に判定する特性が見られた.各手法を統合したところ,特に(1)(3)の統合手法において,一晩の睡眠構造を把握することに最も貢献し,この成果を国際会議AAAI Spring Symposium Seriesにて発表した.
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