研究実績の概要 |
2021年度は主に次の3つの課題に取り組んだ。 (1) 言葉の意味や概念の改訂に関するウィルフリッド・セラーズの理論の再構成・検討:ある概念が別の概念に取って代わられるという「概念置換」と、ある概念が同一性を保持したまま変化するという「概念変化」をどのように区別するのかという問題(トピック連続性の問題)に対して、セラーズが推論主義的意味論の立場から回答を与えていること、セラーズの回答からはトピック連続性は経路依存的であることが帰結することなどを、オンラインワークショップ Conceptual Engineering and Pragmatism にて発表した。また、言葉の意味や概念の改訂に関するセラーズの理論を、彼の同時代人のルドルフ・カルナップとウィラード・クワインの理論と比較検討した成果を論文としてまとめ、国際誌に投稿した。 (2) 概念の批判的研究においてしばしば用いられる「概念は機能をもつ」という考えの妥当性の検討:Cappelen, Fixing Language (2018); Haslanger “How Not to Change the Subject” (2010); Thomasson, “Conceptual Engineering?” (2021)などの先行研究の検討を行った。この成果は (1) の成果と合わせて論文化する予定である。 (3) 言葉の意味や概念に関するある種の不正義が存在するという考えの検討:言葉の意味や概念に関するある種の不正義が存在し、そうした不正義について考察する際に言語哲学における意味論とメタ意味論の区別が有益であるという考えを、哲学方法論における欠陥の概念をめぐる議論や、認識論における認識的不正義をめぐる議論と比較しつつ検討した。この成果は、応用哲学会第十三回年次研究大会などにおいて発表した後、論文としてまとめ国際誌に投稿した。
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