研究課題/領域番号 |
21J00061
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
松井 隆明 一橋大学, 大学院社会学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 推論主義的意味論 / 概念改訂 / ウィルフリッド・セラーズ |
研究実績の概要 |
2022年度は米国のピッツバーグ大学に滞在し、推論主義的意味論の第一人者であるロバート・ブランダム教授のもとで、主に4つの課題に取り組んだ。 (1) 概念の改訂に関するウィルフリッド・セラーズの理論を再構成し検討する作業の一環として、セラーズの理論の帰結である「概念変化における主題連続性の経路依存性」のさらなる含意を検討した。この成果については、ダートマス大学において行った講演"Inferentialism, Conceptual Engineering, and Path-Dependence of Topic Continuity"において報告するとともに、論文としてまとめたものを国際誌に投稿した。 (2) 分析性に関するセラーズの理論がクワインの分析性批判にどのように応答することができるのかを、特に分析的な文の改訂可能性の問題に着目して再構成し、国際誌に投稿した。 (3) 概念の規範的研究のケーススタディとして、自由意志概念の改訂をめぐる議論を主に方法論的な観点から検討した。この成果については、応用哲学会第14回年次研究大会において開催された自由意志概念の概念工学をめぐるワークショップにおいて、「多元主義的概念工学の可能性」という提題として報告した。この成果は、さらなる検討を行った上で学術誌に投稿することを予定している。 (4) ピッツバーグ大学科学哲学アーカイブに保管されているセラーズの遺稿のうち、概念の変化に関する遺稿の調査を行ったが、特筆すべき成果は得られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度に学術誌に投稿した論文はいずれもまだ査読中であるが、研究成果の報告は講演やワークショップにおける提題としても行っている。また、2023年度に取り組む課題の準備作業として、概念工学の実装に関する先行研究の検討に着手するなど、当初の計画以上に進展している部分もある。総合的に判断すると、現在の進捗状況はおおむね順調と言える。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は次の3つの課題を中心に取り組む予定である。 第一に、2022年度に引き続き、不正な概念について考察するための理論的枠組みの考案・洗練化に取り組む。この課題については、その成果の一部を、ポーランドのウッチ大学で開催されるThe Eighth International Conference on Philosophy of Language and Linguistics (PhiLang 2023) において、「Reengineering Concepts by Creating a New Linguistic Subcommunity」というタイトルで発表することが決定している。 第二に、2022年度に引き続き、推論主義的意味論において経験的探究が果たしうる役割を明確化することを通じて、概念の規範的研究における経験的探究の役割を明確化することを試みる。この課題に取り組む際には、社会構築主義において経験的探求が果たしうる役割をめぐる議論(Haslanger 2005; 2006)を参照する予定である。 第三に、2022年度に開催された自由意志概念の概念工学をめぐるワークショップにおいて提唱した「多元主義的概念工学」という理論的選択肢の意義と限界についてより詳細に検討する。この課題に取り組む際には、科学哲学における関連する議論(多義的な概念の消去主義をめぐる議論(Ereshefsky 1992)や、パッチワーク概念をめぐる議論(Haueis 2021; Wilson 2006))を参照する予定である。
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