研究課題/領域番号 |
22J20001
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
縄田 寛希 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | 利益調整 / 利益分布 / 利益ベンチマーク / 時間的視野 |
研究実績の概要 |
2022年度は、黒字や増益などの閾値前後での利益分布の連続性を検証するBurgstahler and Dichev (1997)の利益分布アプローチを多変量解析に拡張したByzalov and Basu (2019)について、日本企業への適用可能性を検証する研究を行った。 これまでロジットベースのリサーチデザインで検証されてきた利益調整の決定要因について条件付き分布不連続モデルで検証した結果、企業規模と負債比率が利益調整確率に有意な影響を与えていることが明らかになった。他の変数においては、有意な関係が確認されず、調整前利益の水準を通してベンチマーク達成行動に影響を与えていると考えられる。 また、利益分布の形状を部分的に利用する条件付き分布アプローチは、最頻値とベンチマークが乖離している分布に適用することが望ましい。赤字回避のベンチマークにおける利益分布の不連続が解消されている米国と比較して、損失回避が健在である日本企業は条件付き分布不連続モデルの検証に適しているといえる。ただし、Byzalov and Basu (2019)の条件付き分布不連続法は前提となる仮定(設定すべきパラメータの数)が多く、分析の頑健性が問われる。 2022年度は、これらの研究結果について日本経済会計学会第39回年次大会で報告を行っている。その際に受けたアドバイスを踏まえ、国内査読誌に投稿を検討中である。また、本研究の予備的検証となる利益分布アプローチの妥当性の検証についても国内査読誌へ投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は計画通りに進行しており、研究成果を日本経済会計学会第39回年次大会で報告することができた。また、事前に行った日本事業における予備的検証も国内査読誌へ投稿中であり、研究はおおむね順調に進展したと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
日本企業のベンチマーク達成行動を検証する文脈では、黒字・増益・アナリスト予想達成が重要となっている米国とは異なり、黒字・増益・経営者予想達成が重視されている。これを踏まえると、アナリスト予想と経営者予想という二つのファクターが日本の資本市場におけるベンチマーク達成行動を特徴づけているといえる。したがって、日本企業のベンチマーク達成行動を検証するうえで、日本のアナリストおよび経営者予想の役割について理解を深める必要がある。今後は、アナリストや経営者の予想(ベンチマーク設定)行動を反映した上でのベンチマーク達成行動に焦点を当てて研究を進める計画である。
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