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2022 年度 実績報告書

コーヒー粕由来セルロースナノファイバーを用いたエマルションの液滴サイズ分布制御

研究課題

研究課題/領域番号 21J20591
配分区分補助金
研究機関横浜国立大学

研究代表者

金井 典子  横浜国立大学, 理工学府, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2021-04-28 – 2024-03-31
キーワードセルロースナノファイバー / 農業・食品廃棄物 / アップサイクル / ピッカリングエマルション / 不安定化機構
研究実績の概要

合成界面活性剤を使わずに、環境負荷の少ないセルロースナノファイバー(CNF)を乳化安定剤として用いたピッカリングエマルション(PE)が注目を集めている。本研究では、食品・農業廃棄物由来のTEMPO酸化型CNF(TCNF)で安定化された水中油滴型PEの不安定化機構の解明を目的としている。
横浜国立大学で行った、ホップ蔓由来TCNFで安定化されたPEの安定性評価をColloids Surf., A誌に論文発表した。ドデカンとオリーブ油の二種類の油を用いて、乳化後一か月間分離しないPEの調製に必要なCNF濃度の決定と油滴サイズ測定を行った。また、油滴/TCNF分布観察から、ドデカンPE、オリーブPEでは複数の乳化破壊メカニズム(フロキュレーション、オストワルド熟成、合一)が異なる度合いで進行していることが示唆された。
2022年1月よりオーストラリアWestern Sydney University(WSU)に滞在し、高分解能核磁気共鳴イメージング(MRI)による緩和・拡散法を使ったPEの乳化破壊メカニズムの解明を行った。医療用に一般に使われるMRIよりも非常に大きい磁場強度(11.7, 14.1 T)を使用することで、数百マイクロメートルの解像度でドデカン・オリーブPEの内部微細構造を撮影し、PE表面付近に凝集/合一した油滴の可視化に成功した。また、PE全体をボクセル単位の緩和時間画像(T1 map、T2 map)および拡散係数画像(ADC map)として再構成することにより、遊離油・乳化層・水層が異なる緩和・拡散特性をもつことを明らかにした。ドデカンPEの乳化層のT1分布は、乳化破壊による微細構造変化との相関が見られたことから、T1 mapがPEの微細構造評価に使用できることを提案した。以上の結果をLangmuir誌に発表し、Supplementary coverに採用された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

前年度に立てた計画通り、WSUにおいてホップ蔓由来TCNFで安定化されたPEのNMR/MRIを使ったPEの緩和・拡散研究を推進しており、2022年度には筆頭著者として二報の学術論文を発表した。当初の目的であった液滴サイズ分布評価は最終年度に行う予定である。以上の点から、本研究課題は概ね順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

ドデカンPEの乳化層の見かけの拡散係数(ADC)は、PE全体の粘度と相関がないことが明らかになっている。この結果は、PE中の油滴サイズ/分布による油の拡散制限、および局所的な油滴のパッキング(フロキュレーション構造など)による油滴周囲の水の拡散制限の影響を反映している可能性が高い。そのため、今後は拡散NMR測定により、ホップ蔓由来TCNFで安定化されたPEの拡散ダイナミクスを分子レベルで解明する。油分子の拡散NMR測定と制限拡散モデルからPEの液滴サイズ分布を決定する。また、溶媒サプレッションを用いたPE中でのTCNFの緩和・拡散測定を試みる。さらに、分子動力学(MD)シミュレーションを使って油-TCNF-水からなる系を構築し、水/油界面におけるTCNFの吸着挙動を解明する。
本研究の最終目標は、拡散NMR測定とMDシミュレーションで得られた結果から、PEの系全体のダイナミクスを記述することである。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件)

  • [国際共同研究] Western Sydney University(オーストラリア)

    • 国名
      オーストラリア
    • 外国機関名
      Western Sydney University
  • [雑誌論文] Evaluating the Stability of Cellulose Nanofiber Pickering Emulsions Using MRI and Relaxometry2023

    • 著者名/発表者名
      Kanai Noriko、Willis Scott A.、Gupta Abhishek、Kawamura Izuru、Price William S.
    • 雑誌名

      Langmuir

      巻: 39 ページ: 3905~3913

    • DOI

      10.1021/acs.langmuir.2c03201

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] A volumetric and intra-diffusion study of solutions of AlCl<sub>3</sub> in two ionic liquids - [C<sub>2</sub>TMEDA][Tf<sub>2</sub>N] and [C<sub>4</sub>mpyr][Tf<sub>2</sub>N]2022

    • 著者名/発表者名
      Harris Kenneth R.、Kanai Noriko、Price William S.、Torres Allan M.、Willis Scott A.、Rodopoulos Theo、Veder Jean-Pierre、Ruther Thomas
    • 雑誌名

      Physical Chemistry Chemical Physics

      巻: 24 ページ: 24924~24938

    • DOI

      10.1039/d2cp03304f

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Using cellulose nanofibers isolated from waste hop stems to stabilize dodecane or olive oil-in-water Pickering emulsions2022

    • 著者名/発表者名
      Kanai Noriko、Sakai Takahiro、Yamada Kohei、Kumagai Sari、Kawamura Izuru
    • 雑誌名

      Colloids and Surfaces A: Physicochemical and Engineering Aspects

      巻: 653 ページ: 129956

    • DOI

      10.1016/j.colsurfa.2022.129956

    • 査読あり
  • [学会発表] MRI and relaxation studies of evaluating Pickering emulsions stabilization2022

    • 著者名/発表者名
      Kanai Noriko、Willis Scott A.、Gupta Abhishek、Kawamura Izuru、Price William S.
    • 学会等名
      The Australian and New Zealand Society for Magnetic Resonance (ANZMAG) 2022
    • 国際学会
  • [図書] 食品ロス削減と食品廃棄物資源化の技術、第IV編 第11章 『農業/食品廃棄物からのセルロースナノファイバー製造と乳化安定剤への使用』2023

    • 著者名/発表者名
      金井 典子、山田 浩平、 川村 出
    • 総ページ数
      292
    • 出版者
      CMC出版
    • ISBN
      978-4-7813-1726-7

URL: 

公開日: 2023-12-25  

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