• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実績報告書

電解発生カチオン種の時空間的レドックス制御に基づく医薬分子合成プロセスの確立

研究課題

研究課題/領域番号 22J00431
配分区分補助金
研究機関横浜国立大学

研究代表者

岡本 一央  横浜国立大学, 大学院工学研究院, 特別研究員(PD)

研究期間 (年度) 2022-04-22 – 2025-03-31
キーワード有機合成化学 / 電解合成 / フローマイクロリアクター / カルボカチオン
研究実績の概要

今年度は、フロー電解系におけるカルボカチオン種の発生条件を探索するため、古典的な電解活性種であるフェノキソニウムカチオンをターゲットとして検討を進めた。その結果、本活性種を発生させうる最適条件を見出し、フェノール類とアルケン間の[3+2]環化付加反応を0.01M程度のごく希薄な支持電解質溶液中で高効率に実施することに成功した。種々の電気化学的測定により、マイクロリアクター内部では希薄電解質溶液でも十分な導電性が確保されていることが確認された。従来広く利用されてきた電極間距離の極めて小さいフロー電解条件では、陽極で生じたフェノキソニウムカチオンが即座に陰極還元を受けてしまい、目的の反応を進行させることが困難であったが、電極間距離を一定の広さへ拡張することでこの課題を解決することに成功した。生成物の酸化電位は基質とほぼ同程度であるものの、フロー電解系では連続的な送液により環化付加体が電極表面から空間的に隔絶されるため、生成物の過剰酸化が抑制される。また、今回用いたマイクロリアクターは新規に設計された組み立て容易な構造であり、なおかつ電極間にサンプル溶液を送液するのみの簡便な実験系であるためハイスループットな検討を行うことが可能である。さらに、本反応を利用することで、含窒素複素環であるジヒドロフロカルバゾール骨格の一挙構築にも成功した。
電解反応は通電のみで様々な酸化・還元反応を実施できるという利点が存在する反面、有機溶媒へ導電性を付与するために過剰量の支持電解質を必要とする点が課題となっている。そのため、極めて短い電極間距離を有するフローマイクロリアクターを利用すれば、上述のように溶液抵抗を抑えることで支持電解質の添加量を大幅に削減した高効率な合成プロセスを構築することが可能となる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

フロー電解系におけるフェノキソニウムカチオンの発生と後続反応の実施に成功したため。本成果はフェノキソニウムカチオン中間体を経る[3+2]環化付加反応をフロー電解系で実施した初めての例であり、本反応の応用によりジヒドロフロカルバゾール骨格の直接合成にも成功していることから、予定通りの計画で検討を進めている。

今後の研究の推進方策

ジヒドロフロカルバゾール合成反応の最適化を進めるとともに、反応中間体として推定される新規ヘテロ環カチオン種の挙動解析を行う。また、今年度確立したフロー電解系を活用することで、基質よりも酸化電位が低いアルケンとのカップリング反応を検討し、バッチ系では合成が不可能な骨格の構築に挑戦する。また、医薬構造に見出されるピロリジン誘導体の合成を視野に入れて他のカルボカチオン種の電解発生を検討していく予定である。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 4件)

  • [雑誌論文] Oxidation Potential Gap (ΔEox): The Hidden Parameter in Redox Chemistry2022

    • 著者名/発表者名
      Okamoto Kazuhiro、Shida Naoki、Morizumi Haruka、Kitano Yoshikazu、Chiba Kazuhiro
    • 雑誌名

      Angewandte Chemie International Edition

      巻: 61 ページ: e202206064

    • DOI

      10.1002/anie.202206064

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Oxidation Potential Gap (ΔEox): The Hidden Parameter in Redox Chemistry2022

    • 著者名/発表者名
      Okamoto Kazuhiro、Shida Naoki、Morizumi Haruka、Kitano Yoshikazu、Chiba Kazuhiro
    • 雑誌名

      Angewandte Chemie

      巻: 134 ページ: e202206064

    • DOI

      10.1002/ange.202206064

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Designing Modular Assembly of Electrochemical Flow Microreactor as an Enabling Technology of Electrosynthesis in Laminar Flow2022

    • 著者名/発表者名
      Yata Ayano、Nakamura Yuto、Okamoto Kazuhiro、Shida Naoki、Atobe Mahito
    • 雑誌名

      European Journal of Organic Chemistry

      巻: 2022 ページ: e202200980

    • DOI

      10.1002/ejoc.202200980

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Stereoselective Production of Imino‐D‐ribitol and C‐Azanucleosides through Electrochemical C-H Functionalization2022

    • 著者名/発表者名
      Morizumi Haruka、Okamoto Kazuhiro、Akahane Shinnosuke、Takemae Hitoshi、Oba Mami、Okada Yohei、Kitano Yoshikazu、Mizutani Tetsuya、Chiba Kazuhiro
    • 雑誌名

      European Journal of Organic Chemistry

      巻: 26 ページ: e202201046

    • DOI

      10.1002/ejoc.202201046

    • 査読あり
  • [学会発表] 酸化電位ギャップ(ΔEox)を指標とした電解レドックス系におけるアリール類の反応性評価2023

    • 著者名/発表者名
      岡本一央、信田尚毅、森住春香、北野克和、千葉一裕
    • 学会等名
      第103回日本化学会春季年会
  • [学会発表] 電気化学的 PCET による N-H 結合の直接的活性化および機構解析2023

    • 著者名/発表者名
      岡本一央、信田尚毅、跡部真人
    • 学会等名
      電気化学会第90回大会
  • [学会発表] 電解フローマイクロリアクターを用いる反応条件スクリーニングによる生産速度最大化の検討2023

    • 著者名/発表者名
      中村悠人、岡本一央、信田尚毅、跡部真人
    • 学会等名
      電気化学会第90回大会
  • [学会発表] 反応場のドナー性制御に基づくピロロフェナンスリドンアルカロイド類の電解合成2022

    • 著者名/発表者名
      岡本一央、千葉一裕
    • 学会等名
      第46回有機電子移動化学討論会
  • [学会発表] 酸化電位ギャップ(ΔEox)を指標とした電解レドックス反応系の効率評価2022

    • 著者名/発表者名
      岡本一央、信田尚毅、森住春香、北野克和、千葉一裕
    • 学会等名
      2022年電気化学会秋季年会
  • [学会発表] Electrochemical Synthesis of Pyrrolophenanthridone Alkaloids via Electrophilicity Control of Intermediates2022

    • 著者名/発表者名
      Kazuhiro Okamoto, Kazuhiro Chiba
    • 学会等名
      German Japanese Symposium on Electrosynthesis 2022
    • 国際学会
  • [学会発表] Evaluation on the Efficiency of Redox Reaction By Oxidation Potential Gap (ΔE ox )2022

    • 著者名/発表者名
      Kazuhiro Okamoto, Naoki Shida, Haruka Morizumi, Yoshikazu Kitano, Kazuhiro Chiba
    • 学会等名
      241st ECS Meeting
    • 国際学会
  • [学会発表] Electrochemical Synthesis of C-Azanucleosides Based on Structural Analysis for in Situ Generated Intermediates2022

    • 著者名/発表者名
      Haruka Morizumi, Kazuhiro Okamoto, Yoshikazu Kitano, Yohei Okada, Kazuhiro Chiba
    • 学会等名
      241st ECS Meeting
    • 国際学会
  • [学会発表] Scalable Synthesis of Versatile Intermediate for Azanucleoside Derivatives Via directanodic N-α Hydroxylation2022

    • 著者名/発表者名
      Yuma Kurose, Kazuhiro Okamoto, Yohei Okada, Yoshikazu Kitano, Kazuhiro Chiba
    • 学会等名
      241st ECS Meeting
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi