研究実績の概要 |
今年度は下記に示す成果を得た。 モジュラー型フローマイクロリアクターを利用した高効率[3+2]環化付加反応:フロー電解反応場を利用することで、従来高濃度の支持電解質を必要としていた電気化学的[3+2]環化付加反応を0.001-0.01 Mのごく希薄な支持電解質条件で高効率に実施することに成功した。フェノキソニウムカチオン中間体を経由する本反応では、電極間距離を通常の薄層フロー電解反応で用いられる値の3倍程度に拡張することで反応効率の大幅な向上がみられたことから、陽極発生したカチオン中間体が速やかに陰極還元される経路が存在することが示唆された。本反応を利用することで、一切の酸化剤を用いずフロインドリン等の縮環骨格を有する化合物を合成することに成功した。 水素結合複合体によるラジカル反応の化学選択性制御:プロトン共役電子移動(PCET)により生成するアミジルラジカル種が、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFIP)の有無により異なる反応生成物を与える現象を見出した。すなわち、ウリジン2'位水酸基にフェニルカルバモイル基を導入した誘導体を、テトラブチルアンモニウムジブチルホスフェート(Phosphate base)およびメチルビニルケトン存在下で電解酸化するとN-アルキル化された生成物が得られるが、わずか2当量のHFIPを添加して同様の電解反応を実施すると、アミジルラジカルがウラシル塩基へ分子内ラジカル付加して生じる環化体ダイマーが得られた。種々のCV測定により、基質とphosphate baseが形成する水素結合複合体のサイズが水素結合ドナーであるHFIPの添加により増大し、疎水的なメチルビニルケトンとの分子間反応が阻害されていることが示唆され、水素結合複合体による化学選択性を初めて示すことに成功した。
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